●中でも,引っ張り荷重―圧縮荷重の組み合わせは要注意
●安全率から学べ,「非安全」という考え方
世の中で起こる破壊現象の大半を占める疲労。それを引き起こす「応力集中」の度合いは,荷重の形態や種類により異なります。応力集中とは文字通り,応力が周囲に比べて際立って高くなる現象。安全な設計を実現する上では,非常に重要なファクターなのですが,存外,1軸の引っ張り荷重による応力集中しか目にしたことがないのでは…。ここでは引っ張り荷重と圧縮荷重を基本に,1軸と2軸の荷重形態による応力集中をすべてお見せしましょう。
基本は,よく目にする,半径aの円孔を持つ無限板に1軸の引っ張り荷重が作用したケース。具体的には,無限板のx軸方向に一様な引っ張り応力pが作用しているケースです〔図1(a)〕。このとき,無限板の中にある,円孔の縁に発生する応力σθは,荷重作用線に対する角度θの関数になります〔図 1(b)〕。その詳しい求め方は他書に譲りますが,結果は式(1)です1)。
参考文献
1)中沢ほか,『固体の強度』,共立出版,pp.29-32.
ここで,rは円孔の中心からの距離ですから,円孔の縁の応力を求めるにはr=aとして計算します。
この式(2)を利用し,円孔の縁の応力を順に求めていくと,次のようになります。
θ=0° でσθ=-p
θ=30°でσθ=0
θ=45°でσθ=p
θ=60°でσθ=(1+√3)p≒2.73p
θ=90°でσθ=3p
これらの計算結果から,1軸の引っ張り荷重が作用した無限板の半径aの円孔の場合には,荷重作用線に対して直角方向(θ=90°,-90°)の縁に最も応力が集中することが分かります〔図1(c)〕。その大きさは3p。実に断面の平均応力の3倍。やはり,孔や切り欠きなどによる応力集中は注意しなければなりません。
なお,このケースでは,3pが最大応力σmaxとなります。
σmax=αp=3p