アナログ エレクトロニクスを支える基盤技術
 

第2回:アナログ技術の新潮流,時間分解能型回路とTDC(前編)

小林 春夫=群馬大学大学院 工学研究科
2010/04/05 00:00
出典:日経エレクトロニクス、2009年4月6日号 、pp.88-91 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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アナログ信号を電圧軸ではなく時間軸で処理する─そんな「時間分解能」型アナログ回路を設計する時代が到来しつつある。この回路は既に実用化されており,研究発表も活発だ。IC/LSIの微細化と低電圧化が進み,電圧振幅を利用した計測/演算/制御が困難になってきたことが背景にある。アナログ回路の新しい潮流について,基本となるTDC(time to digital converter)を中心に回路動作や応用例を解説する。(日経エレクトロニクス)

 電圧でアナログ信号をとらえ,演算や制御を行う。こんなことは当たり前で,意識することさえなかった,という人は多いだろう。

 ところが現在,新たなアナログ回路の設計手法が広がりつつある。測定/処理の軸を従来の「電圧軸」ではなく「時間軸」に変更して,アナログ回路設計を行う方法が注目を集めている。

 ここでは,アナログ回路設計のパラダイムを変える「時間分解能」型回路の動作や応用例を,基本から解説していく。後述するように,この回路には特別な製造プロセス技術は不要で,従来の回路と混在させることが容易である。今後,今回の新しい回路が適材適所で着実に利用されていくと考えている。

微細化と低電圧化が背景

 LSIの製造プロセス微細化の進展とともに,デジタル回路は面積の縮小や高速化,低消費電力化を進めてきた。しかし,アナログ回路では微細化に伴い,

▽トランジスタの速度飽和効果やドレイン抵抗の低下のため,トランジスタの利得が小さくなる

▽しきい値電圧変動などの影響による素子特性バラつきが大きくなるので,回路の面積を小さくできない

▽電源電圧が下がってくると従来回路構成で動作するとは限らず,信号対雑音比(S/N)も悪くなるといった問題が生じる。

 これまでのアナログ回路は,主にアナログ信号を電圧振幅で処理する「電圧分解能」型回路を利用して設計してきた。回路を設計する上で,電圧が最も扱いやすいからだ。ところが電圧振幅を利用しているので,低電圧になるとどうしても回路動作に悪影響が出てくる。このため,電圧分解能型アナログ回路はデジタル回路ほど微細化の恩恵を受けることがない。電源電圧が1V程度になって,いよいよ設計が困難になってきている(図1)。

図1 時間分解能型アナログ回路が脚光を浴びるようになった背景
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