アナログ エレクトロニクスを支える基盤技術
 

第1回:30年ぶりに基本設計を一新したリニア・レギュレータ

高橋 和渡=リニアテクノロジー
2010/03/30 16:30
出典:日経エレクトロニクス、2009年3月23日号 、pp.122-131 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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機器開発者にとっておなじみで,定番の電源ICであるリニア・レギュレータ(3端子レギュレータ)。その基本設計を大きく変えた「LT3080」を,Linear Technology社が2007年に出荷した。1V以下の低電圧出力,並列接続による大電流化という利点がなぜ得られるのか,どのようにしてその回路を生み出したのか。回路構成,動作と使い方,開発の経緯,発明者の言葉を通して,リニア・レギュレータの新しい流れを解説する。(日経エレクトロニクス)

 携帯電話機,パソコン,ゲーム機,事務機器,自動車…。出力電圧可変型リニア・レギュレータ(3端子レギュレータ)は,至る所に搭載されている。電子機器内の電源電圧は多様になったが,リニア・レギュレータを使えば所望の電圧を手軽に得られるため,機器開発者にとってなじみ深い部品と言えるだろう。

†リニア・レギュレータ(3端子レギュレータ)=出力電圧が一定になるように制御する電源回路。入力端子,出力端子,グラウンド(接地)の3端子で構成可能なので,3端子レギュレータと呼ぶことがある。ただし,機能を拡張するために3端子以上になっている製品も多い。

 当社は,リニア・レギュレータの出力電圧を安定化するフィードバック回路の基準として,従来の定電圧源ではなく新たに定電流源を採用したIC 「LT3080」を,2007年に製品化した。1976年に3端子の出力電圧可変型リニア・レギュレータが世に出て以来踏襲されてきた基本設計(アーキテクチャ)を,30年ぶりに変更したことになる注1)。0Vからの低電圧を出力でき,並列接続によって供給する電流を容易に増やすことができるといった特徴がある(図1)。

注1)1976年以前の3端子のリニア・レギュレータは出力電圧固定型だけだった。このため,3端子で可変型を実現したことは斬新だった。今回の「LT3080」はこれを原型としており,3端子出力電圧可変型としては約30年ぶりの基本設計変更になる。なお,フィードバック回路は,1976年以前から定電圧源が基準として用いられている。

図1 リニア・レギュレータ(3端子レギュレータ)の基本設計を変更
[画像のクリックで拡大表示]

 定電圧源では,特性のバラつきや温度による変化が小さい半導体の物性値(バンドギャップ)を利用できる。定電圧源は従来のリニア・レギュレータに限らず,多くのICで使われているため,今回のように定電流源を基準としたリニア・レギュレータという発想はあまりなかったと言えるだろう。

 電源の市場ではスイッチング・レギュレータが大きく成長していることもあり,リニア・レギュレータは技術的に“枯れた”ものと見られることが多かった。「今更,技術的に変えることがあるのか」と不思議がられたこともある。

†スイッチング・レギュレータ=トランジスタをオン/オフすることで出力電圧を制御する電源回路。スイッチングによって生成した高周波のパルス信号を,平滑回路によってリップルを抑えた定電圧とする。オン/オフの時間の比率(デューティ比)や周波数を変えることで,出力電圧が安定化する。スイッチング周波数が高いほどトランスや平滑回路の小型化を図れるが,スイッチングに伴う電磁雑音が発生するため対策が必要になる。

 実は,今回のアーキテクチャは,かなり前から構想を温めていたものである。十分な製造プロセス技術がなく実用化できなかったが,最近の製造プロセス技術の進化と低電圧・大電流化というニーズの高まりによって製品化に至った。

 以下では,この回路動作や利点,開発の経緯について解説していく。

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