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実力の高め方(1)問題と対策

沢村 亮=EMCコンサルタント
2009/06/02 00:00
出典:日経エレクトロニクス「NEプラス」、2007年12月31日号 、pp.P62-P65 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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EMCにかかわる技術者が,現場で認知されず苦しむことは少なくありません。最近,社内にEMCの試験所を設ける機器メーカーが増えていますが,品質を軽視した効率至上主義に技術者が悩まされるケースが目立ち始めました。原理原則に立ち返って,組織と技術者の役割を明確にしておくことが重要です。そうすれば技術者は生き生きと仕事ができ,実力も高められます。機器メーカーでEMCに長年従事してきた技術者が,キャリア形成や組織の在り方を提言します。

 機器メーカーにとってEMC(electro-magnetic compatibility)は不可欠な技術ですが,現場では悩ましい問題に直面することが少なくありません。

 本来,機器メーカーでは設計者がEMCに取り組むべきであり,実際にそうしているところは多いと思います。ところが,設計者とEMC対策を行う担当者(EMC対策者)を分けてしまう企業が出てきています(図1)。また,機器メーカー内に試験部門/試験所(インハウス・ラボ)を設けるところが増えましたが,インハウス・ラボの独立性を犠牲にして設計部門に従属させてしまう動きも見られます。

図1 機器メーカーがEMCに取り組む体制の悪い例
設計者がEMCを意識せず,同じ失敗を繰り返しやすい。品質のチェックも甘くなりがちです。
[画像のクリックで拡大表示]

 こうすると,一見,開発スピードが上がり効率がよくなるように見えるのですが,実は大きな落とし穴を作っていることになります。詳しくは後ほど説明しますが,EMC品質の確保が難しくなり,市場抜き取り試験で不適合とされて,販売中止になる場合もあるからです。

 問題の根底には,EMC対策や試験などを軽視する意識があります。手間やコストは当然削減すべきですが,不可欠なことを削ってしまっては大きな問題になります。技術者も事業部長も経営者も,本来の役割や職責をきちんと考え,品質の高い製品を出荷できるようにしなければ,自分のためにも組織のためにもなりません。

 ここでは,機器メーカーが抱える構造的な問題と対策を二つ挙げます。さらに,技術者の役割と実力の高め方について解説します。

問題と対策(1)EMC対策のコストや時間がかさむ

 よくある問題の一つは,設計者がEMCを考慮せずに開発を進め,電磁雑音についてはEMC対策者に任せきりにしてしまうことです。これによって,EMC対策のコストが上昇し,対策に必要な期間が延びてしまうことが少なくありません。ひどいときは設計のやり直しになりますし,開発中止に至る場合さえあります。

 この問題の主な原因は,もちろん設計段階でEMCを十分に検討していないことにあります。EMCの品質は,設計段階で大部分が決まってしまいます。ざっくりと8割方が決まると言ってよいでしょう。

 例を挙げると,CPUやLSIは全く同じ機能であってもメーカーによって電磁雑音を放射するEMI(electro-magnetic interference)のレベルに差があります。不要輻射レベルの低いメーカーを選べば,EMC対策部品を減らすことが可能です。EMI品質の良いメーカーの部品コストが1割高いとしても,対策部品や対策時間のコストを考えると,全体としては安くなる可能性があります。

 電磁雑音はにおいと同じで,もとから絶つのが最も効果があります。ふたをして抑えるのは難しいですし,いくら消臭剤を使っても効かないことがあります。EMC対策も同じです。こうした知識を設計者が持ち合わせているか否かによって,出来上がる製品のEMC品質が決まってしまいます。

 使用する部品は,設計者自身が決める権限を持っています。設計者がEMCに関する品質に影響を与える部品を知り,どれを選定するかが,非常に重要です。ところが,設計者がよく考えず,電磁雑音の対策をEMC対策者に丸投げしてしまうことが少なくありません。設計者がEMC対策という泥臭い仕事を避ける,部品コストの安さに目を奪われて電磁雑音の放射レベルを重視しない,といったことは日常茶飯事です。

 設計段階でEMC対策のすべてを行うことは現実的ではありませんし,そもそも不可能です。ただし,問題事例とその対策を蓄積し,少しずつ改善していく体制にしておかないと,無線技術の普及や高度化などで複雑になる一方の電磁環境に対応できなくなります。

 そのためには,設計者がEMCに関して責任を持つ体制を構築しなければなりません(図2)。EMCの関係者には酷な言い方になるかもしれませんが,EMC対策者という存在自体が機器開発では弊害になります。人間は誰しにも楽をしたいという気持ちがありますが,設計者のその気持ちを助長するのがEMC対策者です。EMC対策者がいると,誰かが対策をしてくれるという甘い環境を設計者に与えていることになり,設計者は同じ失敗を繰り返してしまいます。

図2 機器メーカーがEMC に取り組む体制の良い例
図2 機器メーカーがEMC に取り組む体制の良い例

 設計者がEMC対策をしなくても済むのは,趣味の世界でしか許されないことです。自分で設計した製品がEMC規制や安全規格をクリアし,商品として店頭に並ぶまで責任を負うのはプロの設計者として当然です。

 もちろん,新しい魅力的な機器を開発するという大事な役割が設計者にはあります。設計者が自分自身でEMC対策を行うのが理想ですが,限界もあります。EMC対策の事例調査や対策指針のまとめ,対策時に必要になる測定などは,試験所の測定技術者が支援するとうまくいく場合が多いものです。つまり,現実的には設計者と測定技術者がタッグ・チームを組むのがよいでしょう。

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