カーナビを取り巻く車載システムの電磁波環境を俯瞰すると,周波数は数十kHzからGHz帯(車載レーダまで入れると77GHz)まで広範囲にわたる(図8)。電界強度についても,送信機や受信機を考慮すれば,160dB(電界強度で1億倍)に及ぶレンジを取り扱う。このことが「自動車は,EMCに関して最も厳しい環境」といわれる理由の一つかもしれない。

【図8 カーナビを取り巻く周波数と電界強度】本グラフは概略を説明するためのもので,精度は厳密ではない。また,車両や仕向地により周波数やレベルが異なる場合があるので,実際の設計に当たっては正規の規格書を参照いただきたい。
図8 カーナビを取り巻く周波数と電界強度
本グラフは概略を説明するためのもので,精度は厳密ではない。また,車両や仕向地により周波数やレベルが異なる場合があるので,実際の設計に当たっては正規の規格書を参照いただきたい。
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 さて,電磁雑音の発生と伝播の基本に立ち返って考える。例えば振幅が1Vp-p(ピーク・ツー・ピークの電圧)のクロックをフーリエ級数展開すると,高い周波数成分を持つことが分かる(図9)。つまり,基本波のみならず高調波が電磁雑音となって障害を与える原因となり得るわけである。一方で,立ち上がりエッジ,立ち下がりエッジの傾きが緩やかになれば,高周波成分のレベル低減に寄与することも分かる。

図9 電磁雑音の発生と伝播
図9 電磁雑音の発生と伝播
高調波が電磁雑音となる。発生源で強度を低減し,伝播系で減衰させる。