Q2オンで2次側に出力

 動作時の波形を参照しながら,ハーフブリッジ半波電流共振方式の基本的な動作を見ていこう(図3)。

図3 半波電流共振の基本的な動作波形
図3 半波電流共振の基本的な動作波形
スイッチング素子Q1やQ2,電流共振コンデンサCi,2次側のダイオードDo1における電圧や電流の波形を示した。2次側に電流が流れるのは図中c~dの期間である。交流電力の正負のうち一方のみで2次側に電流が流れるため,半波整流と呼ばれる。図中の太い破線は,軽負荷時の波形を示している。

 ハーフブリッジ全波電流共振方式と同じく,動作の状態は大きく四つに分かれる。図3中の期間a~bは,ゲート信号Vg1を入力することによりQ1をオンにしている状態である。Q1がオンであるために直列共振回路には入力電圧が印加される。共振用リアクトルLrと1次インダクタンスLpに励磁電流が流れ,電流共振コンデンサCiに電荷が蓄積される。このとき,2次巻き線S1に発生する電圧は整流ダイオードDo1の導通方向とは逆の電圧となるため,2次側に電力は放出されない。

 続く期間b~cは,Q1,Q2共にオフとなっている。bのタイミングでQ1をオフにすると,1次側を流れる励磁電流により電圧共振コンデンサCvの電荷が徐々に引き抜かれ,Q2のドレイン─ソース間の電圧Vds2が下降する。Vds2がゼロまで低下した後は,Q2の寄生ダイオードD2を通してLr,Lpに蓄積されている励磁エネルギーをリセットする方向に共振電流が流れ続ける。

 期間c~dは,Q2にゲート信号Vg2を入力し,Q2をオンにしている状態である。cのタイミングでQ2をオンにするとき,Q2にはソースからドレインの方向に共振電流が流れている。この影響により,ゼロ電圧スイッチング(ZVS:zero-voltage switching),ゼロ電流スイッチング(ZCS:zero-current switching)となり,ターン・オン時のスイッチング損失が発生しない。

 Q2がオンになるとCiに充電された電圧によって直列共振回路に共振電流が流れ,Ciの電荷が放電されるとともにLrとCiによる共振電流が2次巻き線S2を通して出力に放出される。その後Ciの電圧が低下するにつれて1次巻き線Pに印加される電圧が減少し,それに伴いS2を通して出力に放出されていた電流が減少していき,やがてゼロとなる。2次側の電流がゼロとなった後は1次側にのみ共振電流が流れ,Ciの放電を維持する。

 その次の期間d~eは,Q1,Q2ともにオフとなっている。dのタイミングでQ2をオフにすると,1次側を流れる共振電流によりCvが徐々に充電される。それに伴い,Q2のドレイン─ソース間の電圧Vds2が緩やかに上昇する。Vds2が入力電圧まで上昇した後は,共振電流はQ1の寄生ダイオードD1を通して入力電源に回生され,励磁エネルギーをリセットする方向に共振電流が流れ続ける。そしてタイミングaの状態に戻り,Q1をオンにする。このとき,Q1においてもZVS,ZCSになっている。その後は,以上の動作を繰り返す。