前回は,代表的なマイクロプロセサの設計者がアーキテクチャをどのように決めたのかについて取り上げました。今回は,今後普及してくるマルチコア時代になると,ソフトウエア開発が重要になってくることを示します。(連載の目次はこちら

横田 マイコンが生まれてから35年間,アーキテクチャはCISCからRISCへ,RISCの後はスーパースケーラやスーパーパイプラインに変わりました。段数をどんどん増やしたスーパーパイプラインも最近はかなり浅くする方向にあり,今はマルチコアに向かっている。皆さんに,今後どうなっていくのかを伺います。

 マイクロプロセサの誕生と進化は,既成概念の否定と新世代応用分野への最適化により成功しました。例えばIntel社は,低消費電力モバイル用プロセサ「Pentium M」の開発に当たり,Coreの前身となる新世代マイクロアーキテクチャを導入,「マイクロOpsフュージョン」と呼ぶ複合化したマイクロ命令を採用しました。さらに,スタック操作や分岐予測を大改変し,パイプライン段数の大幅削減も図りました。ところでシステムは,1940年代に始まった「計算の時代」から1970年代の「メディアの時代」へと進み,2000年代の「人の時代」へと30年周期で進化しています。一方現在は,多機能携帯電話機,マルチプロセサ,マルチコアなどに示されるようにハードウエアが成長している時代ですが,やがてソフトウエアの時代が到来し,新世代の言語,OS,応用ソフトが出現するでしょう。

金子 パイプラインの段数や動作周波数といった絶対値的なものよりも,利用目的によって実際のインプリメンテーションが決まってくると思います。マルチプロセサの話題が最近多いのは確かで,我々もデュアルコアを組み込みマイコンに搭載する構想を持っています。

 プロセスの進歩にはやはりある程度の時間がかかってしまう。それを見越した上で,アーキテクチャを決めていくことになります。今後,設計ルールが65nm,55nm,45nmと進むのを相当意識しています。個人的には,当面はマルチコアを利用する上で必要になるソフトウエアやコンパイラの技術,スケジューリングの技術などの開発に軸足を置いていこうかなと考えています。