アナログ エレクトロニクスを支える基盤技術
 

主流となった全波電流共振方式(1) 薄型化や大画面化が普及を後押し

京野 羊一=サンケン電気 技術本部 PM事業部
2009/04/07 00:00
出典:日経エレクトロニクス、2008年7月28日号 、pp.111-114 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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CRTテレビからFPDテレビへ移り変わる中で,電源に要求される仕様も大きく変わってきた。フライバック方式の電源では,大画面化による出力電力の増大,薄型化のための高効率化などに応えられない。連載2回目の今回は,これらの要求を満たせるハーフブリッジ全波電流共振方式を解説する。(日経エレクトロニクスによる要約)

 全世界的にテレビの薄型化,大画面化の流れが急速に進み,2007年第4四半期では液晶テレビが世界出荷台数でCRTテレビを抜き,ついにトップに立った。この流れの中で,電源に要求される出力の仕様も大幅に変わることとなった。

 CRTテレビ用電源で要求される出力電圧は,前回も説明したように140V程度と高い。そのため,同じ出力電力で比較した場合,低圧出力の電源に比べて2次側の整流損失の影響が小さい。加えて,トランスの1次─2次間の巻き数比が小さく,結合の良いトランスを作れる。このため,ターン・オフ時に1次側FETに発生するサージ電圧を小さく抑えることができた。出力電力に関しても大半が200W以下と,そう大きな電力ではない。このため,コスト的にも有利なフライバック擬似共振方式が主流となっていた。

 一方,液晶テレビ用電源では,大画面化に伴う出力電力の増大,発光原理の違いによる低圧出力化,薄型化のための高効率化が要求されるようになった。液晶テレビにおいても画面サイズが32型未満の比較的小さいクラスであれば,フライバック擬似共振方式が用いられる場合が多い。しかし,大画面クラスではこれらの要求を満足するために,高効率,低雑音で,大電力を取り出しやすいハーフブリッジ全波電流共振方式が用いられるようになった。これから2回にわたり,ハーフブリッジ全波電流共振方式の回路構成や動作原理,同方式を用いる電源の特徴について説明する。

スイッチング素子を2個使う

 まず,ハーフブリッジ全波電流共振方式の回路構成を紹介しよう。同方式の基本回路構成は,入力電源電圧に対してMOSFETなどのスイッチング素子であるQ1,Q2を直列に接続したハーフブリッジ構成となっている(図1)。回路中にあるダイオードD1,D2は転流用ダイオードで,MOSFETの寄生ダイオードで代用することができる。Q2には共振用リアクトルLr,トランスT1の1次巻き線P(1次インダクタンスLp),電流共振用のコンデンサであるCiから成る直列共振回路と,電圧共振用のコンデンサであるCvを並列に接続している。トランスT1には,巻き数が等しく2次側の接地に対して逆の極性となる2対の2次巻き線を巻いており,それぞれ整流用のダイオードDo1,Do2を通して出力に接続している。

図1 全波電流共振の基本回路構成
図1 全波電流共振の基本回路構成
ハーフブリッジ全波電流共振方式のスイッチング電源回路の概念図である。スイッチング素子Q1,Q2は専用IC(例えば,サンケン電気製の「SSC9500」など)で制御する。

 共振用トランスとして図2に示すような,1次巻き線と2次巻き線を分割し疎結合として,意図的にリーケージ・インダクタンスを作り出すトランスにしている。共振用リアクトルLrは,このリーケージ・インダクタンスで代用することが一般的である。

図2 共振用トランスの外観写真
図2 共振用トランスの外観写真
1次巻き線と2次巻き線を巻く位置を分割した構造になっており,大きなリーケージ・インダクタンスが作れる。

 トランスについては,液晶テレビのみならずPDPテレビを含めたフラットパネル・ディスプレイ(FPD)テレビの薄型化に対応すべく,低背型の共振トランスの開発も進む。さらに,FPDテレビではトランスの複数使いや,トランスと共振用リアクトルを分けて構成するといった手法も用いている。テレビ・メーカー各社の薄型化競争の中で,すべてのメーカーの要求する出力仕様,高さ制限を満足するトランスの実現は困難なため,トランスの構成手法で対応している状況である。

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