ジッタと雑音について,もう少し掘り下げて考えてみよう。ジッタと雑音は,それぞれ独立に発生原因が存在する場合が多い。ただし,発生したジッタと雑音は,伝送系を通過する過程で相互に変換され,変換後の状態が受信回路の入力点で観測される場合がある。

 例えば,ランダム雑音として発生した電圧方向の揺れである雑音成分は,信号波形が切り替わる部分(エッジ部)において,時間方向の揺れであるランダム・ジッタとしても観測される(図4)。ジッタと雑音が逆の場合でも,切り替えエッジ部においてジッタが雑音成分として観測される可能性もある。図4のランダム雑音のみではなく,その他の分類のジッタや雑音も同様に,切り替えエッジ部では相互に変換されて観測される。

図4 波形の傾きによる雑音─ジッタ変換例
波形が切り替わる部分(エッジ部)において,ジッタと雑音は相互に変換される。信号波形の傾きは,ジッタと雑音の相互変換に影響する。

 このため,ジッタと雑音の両方が信号波形に重畳している場合には,発生原因がジッタであるのか雑音であるのかを念頭に置かねばならない。そのことを把握した上で,観測されたジッタと雑音の両方を分析することが必須だ。そうすれば,根本的な原因が雑音であるのか,あるいはジッタであるのかを意識した詳細な解析が可能になる。

 図4は,信号波形の切り替えエッジ部における傾きの大きさが,観測されるジッタ量や雑音に影響を与えていることを示している。実際の高速伝送系では,伝送系通過により高調波成分が減衰し,切り替えエッジ部の傾きは送信側に比べて受信側は緩やかになる。このため,例えば送信側で同じ量の雑音成分が存在したとしても,ジッタ量は送信側よりも受信側が大きく観測されることに注意が必要である。