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差動系でも存在する同相モードの影響(1) 基板構造や配線レイアウトに配慮必要

高田 芳文=日立製作所 エンタープライズサーバ事業部
2009/04/07 00:00
出典:日経エレクトロニクス、2008年4月7日号 、pp.120-122 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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差動伝送線路を用いた信号伝送では,信号波である差動モード電圧以外に同相モードという電圧の振幅が見られる場合がある。今後の極めて高速な伝送では,同相モードの影響も気になってくる。加えて,高速化するほどS/Nが悪化するので,ランダムに発生する雑音やジッタの影響も無視できない。(日経エレクトロニクスによる要約)

 高速伝送系を設計する際に踏まえておくべき課題について,これまで紹介してきた。今回は残る二つの課題,すなわちミックス・モード設計と確率論的なビット・エラー・レート(BER)設計を解説する。ミックス・モード設計とは,数Gビット/秒を超える高速インタフェースで一般的に用いる差動伝送において,P極信号の波形とN極信号の波形の差分(差動モード)だけでなく,波形の和(同相モード)も考慮して伝送路を設計することである。確率論的なBER設計とは,伝送系が高速化するほどランダムに発生するジッタや雑音の影響が顕著になることを踏まえて,BERを設計することである。

振幅差で同相モードが発生

 まずは,差動モードと同相モードの考えを取り入れたミックス・モード設計から紹介しよう。差動伝送では,差動出力回路が出力した差動信号の電位差を信号波形としてP極配線とN極配線のペア配線(差動配線)を使って伝送する。このため,実際の装置においてアイ・パターンの波形の開口部(アイ開口)を観測するときは,P極配線とN極配線の両端の電位差を測定することが普通である(図1(a))。しかし,さらに注意深く現象を見るために,P極信号とN極信号のそれぞれについて接地(グラウンド)電位との電位差を観測したとき,P極信号の波形とN極信号の波形が非対称になっている場合がある(図1(b,c))。差動伝送系の設計であるからといって2本の配線間の電位差,つまり信号伝送の差動モード波形のみを観測していると,P極とN極の波形が実は非対称になっている場合に,それを見落としてしまう。

図1 差動波形とP極/N極波形
差動振幅の観測では普通にアイが開いているように見えても,接地に対するP極やN極の波形を個別に見ると,P極とN極の対称性が崩れて一方が小さくなっている場合がある(a~c)。

 このように,P極波形がN極波形よりも振幅が大きくなっている現象は一体,何を示しているのだろうか。図2を使って説明する。図2では正弦波の波形において,P極波形がN極波形よりも大きい場合を考える。このとき,差動モード波形(電位差)はP極波形とN極波形の差で示す。そして同相モード(コモン・モードとも呼ばれる)波形はP極波形とN極波形の和で表す。P極波形とN極波形の振幅が同じであるならば差動モード波形のみで,同相モード波形は発生しない。P極とN極では電位の極性が反対であるからだ。しかし,P極波形がN極波形よりも大きい場合は,P極波形とN極波形の振幅差を振幅とする同相モード波形が発生してしまう。

図2 P極/N極間の振幅差による同相モード発生
P極波形の振幅がN極波形よりも大きな場合を示した。P極波形とN極波形に振幅差があるということは,すなわち「同相モード」の存在を表している。

 つまり,P極波形とN極波形の振幅が非対称になっている場合に,その差動信号伝送系には,伝送に必要な差動モード波形に加えて,信号伝送にとって本来不必要な同相モード波形が存在していることになる。このことは,差動電圧だけでなく接地に対するP極の電圧,接地に対するN極の電圧の三つの波形を同時に測定することで初めて見えてくる。

 このように,実際の差動信号の伝送系では,差動モードだけではなく同相モードも同時に存在している可能性がある。しかし,差動出力回路と差動入力回路を差動伝送線路でつないだ差動信号伝送においては,この同相モード成分の存在を見落としがちになる。この同相モードに関して,さらに考察してみる。

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