高速化によってシンボル間干渉が顕著になると波形が歪み,アイ・パターンの開口部は閉じてしまう。コネクタやスルーホールなど伝送路内の寄生成分が引き起こす信号振幅の減衰や,寄生成分が原因で共振という問題も起こる。これらの課題の概要や原因などを,2回にわたり紹介する。(日経エレクトロニクスによる要約)

 伝送速度が数Gビット/秒を超えるような高速インタフェースを実現するために,7項目の課題があることを,これまで示してきた。7項目とは,

(1)タイミング・マージンの減少
(2)伝送系の減衰量の増加
(3)伝送特性の周波数依存性による波形歪みの発生
(4)容量性寄生成分の影響の増大
(5)共振現象による伝送特性劣化の顕在化
(6)ミックス・モード伝送設計(差動モードと同相モード)
(7)BER設計(確率論的設計)

である。このうち,(1)~(2)の項目については既に説明した。今回は(3)~(5)の項目について考える。(3)は信号波形のなまり,(4)は寄生成分による信号振幅の減衰,(5)は伝送線路内で発生する共振による伝送特性の劣化,を引き起こす。いずれも伝送速度が数Gビット/秒を超えると一層顕著になる問題だ。

周波数ドメインで波形歪みを評価

 まずは,伝送特性の周波数依存性による波形歪みの発生を説明しよう。これまで2回にわたり,基板配線の振幅透過率は周波数が高くなるにつれて小さくなる,すなわち減衰量が大きくなる特性を持っていることを示した。これは言い換えると,基板配線の伝送特性には周波数依存性があるということである。このことが,データ・パターンに依存する波形歪みを生じさせ,シンボル間干渉と呼ばれるデータ依存のジッタや雑音を生む原因となる。その結果として,受信のアイ・パターンの波形の開口部(アイ開口)を閉じさせてしまうことは,既に多くの文献等で解説されている。このようなジッタや雑音の影響は,時間ドメインで表現した波形を見れば直感的な理解が可能である(図1)。

図1 シンボル間干渉の発生
シンボル間干渉と呼ばれる,データ伝送時の波形のなまりに依存するジッタや雑音の発生は,時間ドメインで表現した波形を見ることで原因を分かりやすく説明できる。

†シンボル間干渉=隣り合うシンボル同士が干渉し合うことで波形が歪む現象。ISI(inter-symbol interference,符号間干渉)と表記することもある。例えば,先に送った信号とその直後に送った波形が干渉すると,送信側が送った信号を受信側で判別するのが難しくなる。信号周波数が高速になるほどシンボル間干渉の影響が大きくなる。