この伝送方式は,「STM-1」と呼ぶ155.52Mビット/秒を基本単位として,そのN倍 (N=0(あるいは1/3),1,4,16,64,256)のビット・レートでの伝送を行います。現在の最高速のビット・レートは,STM-256(155.52Mビット/秒×256=39.81312Gビット/秒)になります。40Gビット/秒のSDHとは,通常このSTM-256のことを指します。

†STM(synchronous transport module)-1=ATM-1はSDHの基本速度であり,155.52Mビット/秒を表します。STM-NのNはSDHの基本速度の何倍であるかを表します。

 この伝送方式は同期型であり,伝送不良時の切り替え時間などを詳細に規定しています。このため,基幹網への応用にふさわしい信頼性の高い伝送方式といえます。ただし,いかに信頼性が高くても,実機で40Gビット/秒のような高ビット・レートを実現しようとすると長距離伝送が難しくなってきます。信号品質の劣化が顕著になるからです。代表的な劣化要因として,伝送路の状態が安定しないことに起因するPMDやジッタ,符号間干渉(ISI)などが挙がります。計測技術の標準化はこれらの劣化要因を統一した基準で測ることを目的にしています。

†PMD(polarization mode dispersion)=光ファイバへの振動や温度変動によって生じる波形歪み。日本語で「偏波モード分散」と呼ばれます。

 また,ITU-Tでは,電気信号固有の信号劣化の要因を排除できるオール光化した伝送方式として,「OTN方式」を2001年に標準化しました。規格の名称は,「G.709/Y.1331」です。SDHは伝送する信号として,電気と光を区別することなく仕様を規定しています。これに対し,OTNは光を伝送媒体にした規格です。また,データ・レートも43Gビット/秒と,SDHよりも少し高くなっています。この方式では,長距離伝送を実現するために,誤り訂正符号の一種であるリード・ソロモン符号を採用している点が特徴です。このため,OTN向けの標準化では誤り訂正機能の性能を規定する統一指標も必要になります。ちなみにSDHでは誤りを検出するための技術は規定していますが,誤り訂正の機能は規定していません。

†OTN(optical transport network)=ITU-T G.709という名称で標準化されている光伝送技術です。OTNはFEC(forward error correction)と呼ばれる強力な誤り検出・訂正機能を備えており,伝送中のデータにエラーが生じても,受信側でそのエラーを検出し,修正することができます。

†リード・ソロモン符号=データの誤りを検出・訂正できる誤り訂正符号の一つです。バイト単位での誤り訂正ができ,誤りが連続して発生するバースト誤りの訂正に向いています。

 現在,SG15ではさらに高速な伝送レートの実現を目指して,120Gビット/秒と160Gビット/秒の通信規格の標準化検討を既に始めています。今後は,こうした将来の伝送技術を使った場合の品質評価に向けた計測技術を標準化していくことになると思われます。