世界の地域ごとに仕様が異なるWireless USB

 Wireless USBと主な無線機器の通信方式を表A-1に示しました。

表A-1 Wireless USBと主な無線機器の通信方式の比較
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 Wireless USBでは,通信距離3mで最高480Mビット/秒,同10mでは最高110Mビット/秒での通信が可能になります。特に480Mビット/秒の通信速度は,有線のHi-Speed USBインタフェースと同等の速度です。用途として,デジタル・カメラやビデオ・カメラなど映像機器からの画像データや,HDDおよびDVDなどストレージ機器からの大量データ転送への応用を想定しています。同じ用途の他の無線通信技術と比較して,圧倒的に高速な伝送速度を実現できます。多彩な機器同士を接続するため,相互接続の確認が非常に重要です。

ハイバンドの利用へ移行

 米国や欧州,日本,韓国でのWireless USBに向けて利用できる周波数帯は大きく異なります(図A-1)。米国では,すべての帯域(バンド)を利用できます。他の地域で利用可能な周波数は,すべて米国の基準の範囲に含まれます。また機器が発する電波の出力の上限を定めたスプリアス・リミットも他の地域と比較して緩い基準になっています。このため,対応する機器や電子部品の開発が非常に有利な状況にあります。

図A-1 各地域における利用可能な周波数バンドの割り当て状況
米国,欧州,日本,韓国の各地域地域でのWireless USBで使用可能な帯域を示しました。米国では,すべての帯域について使用可能なため,他地域に向けた製品を国内で電波を飛ばして開発することができます。これに対し日本では,米国向けの製品を開発する場合には,電波暗室などの使用が必須になります。
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 五つあるバンド・グループのうち,バンド・グループ1をローバンド,グループ2以降をハイバンドと呼んでいます。Wireless USBに関しては,ローバンドに対応することが必須になっています。

 しかし,三つあるグループ1のバンドのうち,国内ではバンド3しか使えません。従って,今後の普及においては7GHz以上のマイクロ波帯域への対応が必須になりそうです。

 実際に,バンド7以上のハイバンドは他の無線システムに影響を与えないことから,比較的使用しやすい状況にあります。日本では,7.6GHz以上で5個の周波数バンドが利用可能であり,欧州や韓国においても利用可能なバンドが多いことから,今後の製品開発のターゲットはハイバンドに移行していくと考えられています。