前回は,物理層の試験における代表的な試験項目であるEVM試験を例にして,計測の注意点と計測結果に基づいて不具合を改善するための分析手法を解説しました。さて,無線のWireless USBだけでなく有線のUSB2.0も搭載されている場合,一つのホストで有線と無線の両方を制御することになるため,これが規格認証試験をする上で障害になることがあります。そこで今回は,HWAおよびDWAを例に,Wireless USBに付随して必要になる,ケーブル接続でのUSB 2.0の規格適合試験について説明します。(連載の目次はこちら

 ここではHWAおよびDWAを例に,Wireless USBに付随して必要になる,ケーブル接続でのUSB 2.0の規格適合試験について説明します。Wireless USBと有線のUSB 2.0の双方が搭載されている場合,ホスト機能を持つ機器が無線と有線で個別に存在するわけではありません。一つのホストで両方を制御することになります。このことが,規格認証試験を実施する上での障害になる場合があります(図9)。

図9 HWAとDWAのUSB 2.0規格認証試験に向けた構成
[画像のクリックで拡大表示]

 図9(a)にHWAの例を示します。この例はパソコン向けの小型モジュールです。パソコンのUSBポートに差し込むことによって,Wireless USBデバイスとのデータのやり取りが行えるようになります。この製品は,パソコン(ホスト)との間のデータ転送にUSB 2.0を使用しています。この場合,規格適合試験モードに移行するためのパソコンから試験対象への指示は,有線を通じて伝えられることになります。この手順は通常のUSB2.0の試験と同様であり,試験する上での障害はありません。このように,ホストになるパソコンとの間をUSB 2.0で接続するHWAおよびデバイスについては,USB 2.0に関するすべての規格適合試験を受ける必要があります。

 これに対しDWAでは状況が異なります。図9(b)の例ではDWAが無線ハブのような役目をしており,ホスト側との接続は無線であるUWBのRF信号を用いて行い,USBのデバイスとはUSB 2.0を用いて接続します。

 このDWAは,Wireless USBおよびUSB 2.0の双方に対応しています。このため,Wireless USBの認証試験を受ける場合にはUSB2.0の認証を事前に得る必要があります。しかし,DWAを規格適合試験モードに移行させる場合には,ホストから接続できることを確認できていない無線通信を使って行う必要があります。このため,この時点では無線通信の接続に不具合が生じる可能性が残されていることを勘案すると,すべての試験項目をカバーできない可能性があります。こうした状況が生じることを想定して,DWAなどホストと直接つながらない部分に有線のUSBポートを持つ製品では,試験項目の一部は可能な範囲で実施すればよいことになっています。


 ここでは,日本国内でWireless USB製品の販売をするための認証を得るためのステップとして,技術適合試験からWireless USBの認証試験までの流れを簡単にまとめてみました。残念ながら,現時点でWUSB EVM Test Suiteに関する情報は公開されていないため,この部分について詳細に述べることはできませんでした。しかし,Wireless USB対応の製品の普及とともに基本的にはWiMediaが実施している試験内容の一部を踏襲する形になる予定です。今後の展開に注目しておきましょう。