前回は,無線機器の開発では,規格認証試験を先取りして法令遵守に対応することが開発の巧拙につながることを説明しました。ここで,計測技術が重要になります。今回は,Wireless USBの認証手順に沿って,そこに必要な計測技術を説明します。(連載の目次はこちら

 本稿では,Wireless USBの認証手順に沿って,そこに必要な計測技術を説明します。認証手続きに際しては,次に述べる3段階の認証に合格する必要があります(図2)。

図2 Wireless USBの規格認証試験の手順
Wireless USB対応機器を,構成する部品がWiMediaの認証を受けている場合と受けていない場合,有線のUSB 2.0ポートを持っている場合と持っていない場合に条件分けした認証手順。
[画像のクリックで拡大表示]

 第1段階の認証は,WiMedia Allianceが実施している相互接続試験(インターオペラビリティー)です。WiMediaの物理層と同じ規定を満たしているかどうかを確認して,認証を取得する必要があります。ただし,製品内部で使用されている物理層のチップが既にWiMediaの認証を受けている場合は,あらためて認証を取得する必要はありません。

†物理層=信号波形を実際に送受信する層。後述のMAC層の信号と無線信号との間にある信号処理部。

 第2段階の認証では,製品が各国の無線規約に準拠しているかどうかを確認する必要があります。日本国内での法順守に向けた技術適合試験の方法は,テレコムエンジニアリングセンター(TELEC)が「超広帯域無線システムの無線局に使用するための無線設備の特性試験方法(T406)」として提示しています。この技術適合試験に合格する必要があります。

 第3段階の認証は,USB-IF(Implementers Forum)による認証です。認証取得の申請を提出し,定められた認証機関で試験を受けます。現時点で試験は,米国ポートランドにある米Intel Corp.の試験サイト内で行われています注3)。Wireless USBの物理層とMAC層の規格にはWiMedia Allianceが推進するMB-OFDM方式が採用されています。このため,認証試験の内容は,WiMediaの認証試験をベースに作られています。

注3)試験サイトは, http://www.usb.org/developers/wusb/を参照してください。USB-IFは2007年10月22日~26日に米国ポートランドで開催するUSB Workshopで,Wireless USBの規格認証試験を行う予定です。これまでは,Intel社のサイト内のみでしていましたが,これでWorkshopに参加すれば,その場で認証を受けられるようになりました。

†MAC(medium access control)層=フレーム構造やアクセス手法を規定するデータ・リンク層の一部。

†MB-OFDM(multiband-orthogonal frequency division multiplexing)=複数の搬送波を互いに干渉し合うことのないように密度を高めることで多重化を図るOFDMをベースにした伝送方式です。3.1G~10.6GHzの帯域を14バンドに分割し,1バンド当たり528MHzを割り当て,それをさらに五つの論理チャネルにグループ化して使用します。Intel 社をはじめとする多くの企業が標準化を推進しています。

 さらに,対象となる製品がUSB 2.0のポートを持っている場合は,USB-IFが主催している「Compliance Test Workshop」やUSB-IFが認定した機関が実施する規格認証試験を受けて,USB 2.0の認証を事前に取得する必要があります。

 これらの認証がすべて得られた段階で,Wireless USBを搭載した製品を各国で販売できるようになります。