HDMI準拠製品の仕様を定義した仕様書が,「HDMI Specification」(以下HDMI Spec)です。通常HDMIの仕様書といえば,これを指します。別に,認証試験を定義した仕様書「Compliance Test Specification」(以下CTS)もあります(表2)。HDMI Specは,HDMI Licensing,LLCのWWWサイトで登録をすれば誰でも入手できます注1)。ところが,CTSはHDMIのライセンス契約を締結したメンバーにしか提供されません。

注1)詳しくはhttp://www.hdmi.org/manufacturer/specification.aspxを参照してください。

表2 HDMIの仕様と規格認証試験の仕様
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 CTSには,認証試験に使用する計測器として推奨できる機材のリスト,実際に試験を行うときの手順と判定基準,計測結果の統計的な処理の方法,ATCの設備リスト,および各種書類の書式などの情報が記載されています。ATCはこれに準じて認証試験を行っていますので,CTSを参照すればATCと同じ試験を実施することができます。

 HDMI SpecとCTSは,共にVer.1.0から規格の策定が始まり,現時点の最新版はVer.1.3になっています(表3)。HDMI Specが変更されると,CTSにもそれに応じた変更が必要になります。このため,両者はおおむね歩調を合わせてバージョンアップされてきました。

表3 HDMIの仕様と機能の変遷
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 例えば,Ver.1.2から1.3への移行時は,新たに拡張された仕様であるDeepColor,ミニ(Type-C)コネクタ,イコライザなどに対応できるように,仕様変更が加えられました。その結果,ケーブルなどの試験対象の形状が変わりました。また,ビット・レートも1.65Gビット/秒から3.4Gビット/秒に高速化したため,オシロスコープなど主要機材を大幅に高性能化する必要が出てきました。

†DeepColor=色の深さ方向を拡張するために追加された,10ビット以上の画像フォーマットの総称。DVIからHDMI 1.2までの規格は,RGB各色を8ビットの情報で伝送していました。HDMI 1.3から各色10,12,16ビットで伝送するフォーマットを追加し,よりきめ細かな色表現ができるようにしています。

†イコライザ=受信機に内蔵される回路で,等価器とも呼ばれます。伝送路の特性が不十分なとき,イコライザによって信号品質が低下するのを補償することによって,より良好な信号伝送ができるようにします。一般的に信号の振幅は,高い周波数領域で減衰します。このため,イコライザの簡単な例は,高い周波数でゲインが大きくなるアンプです。実際の伝送路や信号の転送速度に対応してイコライザ特性を最適化することが理想ですが,HDMIではおおむね不満のない特性が得られる標準イコライザを使用するよう規格に定めています。

セルフ・テストを認める

 ATCは,現時点で全世界に6カ所あります。日本に2カ所,北米と欧州に各1カ所,中国に2カ所です。ATCではCTSに規定された試験環境を使って,規定の手順に従って規格認証試験を実施しています。HDMIのライセンス契約者は,HDMI準拠の製品をATCに送って試験を受け,合格すれば認証製品としてHDMIロゴを貼付(ちょうふ)した製品を販売することができます。