「機動戦士ガンダム」「タイムボカンシリーズ」などの作品で知られるメカニック・デザイナーの大河原邦男氏。日経Roboticsでは同氏を招き、「これからのロボットデザイン」などについて語っていただくイベントを8月20日に開催する(詳細はこちら)。
大河原氏によれば、自分が関わった作品を見て育ち、その影響を受けて技術者になった人たちが今、実際のロボットづくりに取り組んでいたりする話を聞くと非常にうれしく、「この仕事をやっていてよかった」としみじみ感じるという。今回のイベントでは講演後に交流会も開催する。皆さんもぜひ参加し、大河原氏とのロボット談義に花を咲かせてみてはいかがだろうか。
以下、ご参考までに「日経ものづくり」2010年10月号に掲載された、大河原氏へのインタビュー記事を紹介する。なお、同氏は8月8日から上野の森で個展を開催するとのことだ(詳細はこちら)。
自己満足ではいけない
「機動戦士ガンダム」で、モビルスーツ(「ガンダムシリーズ」に登場する架空兵器の1つ。1種のロボットで、ほとんどの場合、人型をした有人機動兵器のことを指す)のデザインを担当しました。私はアニメというバーチャルな世界のメカニック・デザイナーで、リアルの世界の工業デザイナーではありません。だから、工業デザイナーと同じことをしていてもダメ。どこかに遊び心がないといけないんですが、私が心掛けているのは、ウソのないデザインをすることです。
実は、アニメのメカニック・デザイナーというのは、絵が好きなメカニック・デザイナーと、メカが好きなメカニック・デザイナーの2つに分かれます。業界に多いのは前者の方で、そういうデザイナーはどこから見ても美しいデザインをする。例えば、前と後ろは別物としてそれぞれをカッコ良く描く。ところがそれをやると、プラモデルにするときに面がつながらないなどの弊害が出てしまうことがあるんです。まあ、それでも、プラモデルの設計と生産の部隊の方で、うまく取り繕ってくれますけど。
これに対して私は後者、つまりメカが好き、ものづくりが好きなメカニック・デザイナーです。正直言うと、絵を描くのはあまり好きじゃない。ですから、1972年にこの業界に入って、当時隆盛だった「超合金玩具」をデザインするときにも、私は絵を描く前に立体にすることを試みた。実際、その方が、超合金玩具のウリの1つだった変形や合体を検証するのにも、スポンサーやプロデューサーに説明するのにも都合が良かったんです。そこで、木型屋さんに頼まずに、超合金玩具を自ら試作した。もちろん、自己流で。だから私のデザインは、現実に変形も合体もできる、ウソのないものなんです。
とはいえ、私たちは絵を描いてナンボ。木型を作っても一銭にもなりませんから、木型で各種機構を検証した後に、ちゃんと絵を描きました。