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 画像認識や音声認識などで他の機械学習技術を凌駕する認識性能を次々と実現しているディープラーニング(深層学習)技術。特に、性能向上が目覚ましいのが、画像中の物体認識などに使われる「畳み込みニューラルネットワーク(convolutional neural network:CNN」だ(関連記事)。今後、家電製品やセキュリティー用カメラ、自動車の自動運転、そしてロボットビジョンなどさまざまな分野で応用が広がりそうである。

 そのCNNの原型「ネオコグニトロン」を1979年に世界で初めて発表したのがファジィシステム研究所 特別研究員の福島邦彦氏である。原型といっても、現在のCNNとは学習手法が異なるだけで、ニューラルネットワークとしての基本構造はほとんど同じである。

 ネオコグニトロンの発表後、福島氏は大阪大学ほかいくつかの大学で教授職を歴任。日本神経回路学会(JNNS) 初代会長、国際神経回路学会(INNS)理事、Asia-Pacific Neural Network Assembly(APNNA)会長など、国内外の学会でも重職を担ってきた。最新のCNNを研究する若手研究者は福島氏を「雲の上の人」と呼ぶ。

 当の福島氏は大学での職を2010年にすべて退いてからも、そうした輝かしい成果や経歴に満足せず、ネオコグニトロンを発展させる研究を続ける第一線の研究者である。その福島氏に、ネオコグニトロンの開発の経緯、CNNとの共通点や相違点、および同氏の最新の研究成果の一端を聞いた。(聞き手は野澤哲生)