滑りやすい路面を走っている自動車の前方に突然、障害物が現れたとき、どのようにブレーキとハンドルを操作すればぶつからないか――。こうした問題を解決するのが最適制御と呼ばれる技術である。最適制御の適用範囲は広く、システムの性能を最大限引き出すための基盤技術といえる。さらに、近年では最適制御を高速に計算してフィードバック制御を行う、モデル予測制御への注目度が高まっているという。モデル予測制御は、時々刻々と最適制御を更新することで状況の変化に対応でき、システムを知能化する一般的な枠組みになっている。電力ネットワークにおいて、社会全体として最適な需給バランスを達成するように電力価格を調整するリアルタイムプライシングも、モデル予測制御で実現可能だ。

 日経BP社では最適制御とモデル予測制御について2015年6月1日にセミナー「最適制御とモデル予測制御の基礎から応用展開まで」を開催する(詳しくはこちら)。同セミナーに登壇する京都大学 大学院情報学研究科 システム科学専攻 教授の大塚敏之氏に、最適制御とモデル予測制御の必要性やキーポイントなどを聞いた。(聞き手は日経BP社 電子・機械局 教育事業部)

京都大学 大学院情報学研究科 システム科学専攻 教授の大塚敏之氏

――最適制御とモデル予測制御はなぜ求められるのでしょうか。できましたら事例を挙げて、最適制御とモデル予測制御の効果を紹介ください。

大塚氏 制御システムが複雑になり、人間の経験や今までの制御理論では対応できない対象が増えています。そのような対象をうまくコントロールする方法として、最適制御、特にモデル予測制御が注目を集めています。

 例えば、人間では扱いきれない数の操作量を持つ船舶の自動操船システムでは、モデル予測制御によって状況に応じた適切な推力配分を行い、経路追従の精度を向上させています。

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――最適制御とモデル予測制御は、今後ますます必要とされるようになるといわれていますが、その理由や背景を教えてください。

大塚氏 自動車やロボット、スマートグリッドなど、高度な制御が求められるシステムの複雑化はとどまることがありません。さらに、コンピューターと数値計算アルゴリズムも進歩していきます。システムの性能を最大限引き出すために、最適制御やモデル予測制御は今後ますます必要とされ、従来の常識を超えた応用が広がっていくと思います。