――ナステントの開発の過程で苦労した点は何かありますか。

阪根氏 先ほどお話したように、この分野が大きなマーケットにつながると考えたことをキッカケに、まずは技術開発担当の山田とともに何かいいアイデアないかとディスカッションを重ねました。その中でほぼ同時に思いついたのが、ナステントの原型です。早速、大学病院の医師に相談しに行ったところ「それは面白い」というコメントをもらい、2007年に開発をスタートしました。

ヘルスケア・ディビジョン・マネージャーの山田弘志氏
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山田氏 開発は、「何をしていくべきなのか?」を探すところから始めました。当時は医師と強いコネクションがあるわけでもなく、医療機器の最終製品としてどういう開発工程を踏むべきかも全く分からない状況でしたから。いろんなところに行き、聞いて、手繰り寄せながらやってきたというのが、開発初期に一番苦労した点です。

阪根氏 最初は材料に金属を用い、挿入後に鼻腔内で展開する(広がる)構造を試してみました。それを山田がさっそく試してみたところ、血まみれになってしまったんです。「社長、これ無理です」と。今では笑い話ですが、そんなところからスタートしました。

 次に柔らかいシリコーンチューブを使おうということになり、最初の試作品が仕上がりました。初期はチューブの先端が鼻腔内で開くような仕組みにしたのですが、さまざまなアクシデントを繰り返しました。例えば、ストッパーの部分を後回しにしていたため、医療用テープで鼻の下に仮固定して眠ったら、起床時に喉の奥までチューブが落ちてしまい、慌てて指を突っ込んで吐き出したりとか…。

 実は、この初期開発モデルは、ナステント クラシックの次に発売する「ナステントEX」というものなんです。チューブを鼻腔内に挿入すると唾液によって30秒でジェルが溶けて中で展開するモデルです。

 ナステント クラシックは、鼻腔内で展開しないただのチューブ形状なのですが、私のようにAHI(無呼吸低呼吸指数)が37~40で「重症の軽い方」のレベルまでの患者ならば、これでもギリギリ効果があると思います。具体的には、ナステント クラシックの対象患者は「いびき患者」「軽症患者」「中等症患者」となります。

 一方で「重症の中等」以上の患者には、鼻腔内部で展開するナステントEXでないと、完全な効果はないといえるでしょう。あわせて両方の鼻の穴に挿入するタイプの「ナステント ツインズ」についても2016年4月を目標に発売する考えです。