――無呼吸症候群の分野でイノベーションを起こしたいと考えたキッカケは何でしょうか。

阪根氏 実は、私自身が重症の無呼吸症候群患者なのです。現在、標準的な解決策としては睡眠時にCPAP(Continuous Positive Airway Pressure、エアチューブと鼻マスクが一体となった医療機器)を装着する方法があります。私も愛用していましたが、患者視点で考えると、どうしてもCPAPでは解決できない問題が存在しました。

CPAP装着のイメージ(写真:BVDC Dollar Photo Club)
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 まずはユーザビリティーです。そもそもこんな機器を付けたら「不快で眠れない」という方もいますし、付けたとしても朝になったら取ってしまっていることもあります。さらに、私自身もそうでしたが、出張の度に持ち運んでいられないという点も問題です。もっともCPAPには、わざわざ病院へ行って検査入院をして、重症以上の人だけが処方されるという“面倒くささ”があります。

 一方で、無呼吸症候群は今や単に“睡眠中に息が止まるだけの病気”ではなくて、糖尿病や脳梗塞、心臓疾患など、がんを除く成人病のほとんどの起源と言われるようにもなってきました。つまり国民医療費のことを考えても、根本的に解決する必要があるわけです。

 ですから私自身の経験も含め、これらの問題を解決することで、とても大きなマーケットにつながると考えたのが開発のスタートになります。