異業種が続々と参入して注目を集めている植物工場。安定した品質と収量を確保するには環境制御技術が欠かせないことから、機器メーカーにとっても期待の新市場となっている。実際、制御機器メーカー工業団体である日本電気制御機器工業会(NECA)は、2015年2月にオランダから有識者を招き、農業制御技術の国際シンポジウム「食の安全を支えるスマートアグリの展望と農業制御技術に関する日欧戦略的協同」(同年2月4日 大阪大学中之島センター、同年2月6日 青山学院大学IVYホール)を開催する。では、制御機器メーカーは、新事業として植物工場ビジネスをどうみているのか。NECA 次世代事業ワーキンググループの平山博之氏(富士電機 食品流通事業本部 流通システム事業部長)に、植物工場を含む施設園芸の展望について聞いた。(聞き手は吉田 勝)

富士電機 食品流通事業本部 流通システム事業部長の平山博之氏
富士電機 食品流通事業本部 流通システム事業部長の平山博之氏

 植物工場は、季節や天候に左右されず計画的かつ安定的に農産物を生産・供給できる食料生産システムです。日本でも、農林水産省と経済産業省が推進している「農商工連携」の1つとして、第3次のブームともいえる盛り上がりをみせています。調査会社〔編集部注:矢野経済研究所(本社東京)〕の調査では、日本国内の植物工場の市場規模は、2013年の230億円から、2025年に1500億円まで伸長すると予測されています。

 植物工場に代表される施設園芸の生産性を向上には、日射量や温度、湿度、風速、二酸化炭素(CO2)、照度、電気伝導度、pH値などの環境データに基づいて、空調や採光、養液、CO2供給などを制御する複合環境制御装置の導入が必要です。それにより農産物の収量拡大や品質向上が図れるだけでなく、消費エネルギーの削減も可能になります。さらに、各種システムを連携させることで、生産から販売、在庫、労務までを一括して管理するニーズも高まるはずです。

 例えば、施設園芸先進国のオランダは、1980年代以降、産学が強力に連携しながら太陽光利用型植物工場の生産性向上を図りました。その特徴は、[1]大規模高軒高施設(ガラスハウス)、[2]環境制御装置によるデータ管理とシステム化、[3]養液栽培、[4]高収益品種への特化、にあり、これらの特色ある取り組みで世界で最も高い収量効率を誇っています。

 翻って日本の施設園芸の状況をみると、依然として小規模なパイプハウス温室での人的環境管理(経験と勘)による土耕栽培が中心です。作物の収量効率ではオランダの1/3~1/5に過ぎません。