自治医科大学附属さいたま医療センター臨床工学部技師長の百瀬氏。医療・介護機器におけるものづくり技術の適用を推奨している。
自治医科大学附属さいたま医療センター臨床工学部技師長の百瀬氏。医療・介護機器におけるものづくり技術の適用を推奨している。
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 これからの成長分野と目されている医療機器。政府が国を挙げて開発を促進しようとしている今、医療現場からものづくり企業に熱い視線が注がれている。製造業で広く活用されている技術や知見が、医療機器・福祉機器の開発におけるイノベーションにつながると期待されているからだ。2014年10月7日に日経ものづくりが開催する「ものづくり力で拓く、新しい医療」で講演する自治医科大学附属さいたま医療センター臨床工学部技師長の百瀬直樹氏に、医療現場からみたものづくり企業に対する期待について聞いた。(聞き手は吉田 勝=日経ものづくり)

――ものづくり企業に対してどういう点に期待されていますか。

 常々思っているのですが、同じ機能の製品や部品でも医療機器向けと製造業向けでは全く違うのではないでしょうか。例えば、センサー。圧力センサーを例に挙げましょう。医療機器でも血圧測定や体内の内圧測定など圧力センサーは随所に使われています。これらは高価で繊細。その割りに計測精度はさほど高いわけではありません。一方、自動車などに使われている圧力センサーは、幅広い温度範囲で作動して高い信頼性が要求されます。でも量産品で価格は低い。こうした製造業では当たり前の技術は、ちょっとした工夫で医療機器にすぐにでも転用できるのではないでしょうか。つまり、一般産業用としては珍しくない技術も、医療機器にとっては安くて高性能なイノベーションとも言える技術になり得るのです。

――製造業向けと医療機器向けには何かハードルがあるのではないですか。

 本当にそんな高いハードルがあるのでしょうか。医療業界の人は“汎用製品なんて医療機器には使えない”と思い、製造業向けの製品を開発しているメーカーは“工業用だから医療機器には使えないだろう”と考える。双方とも高いハードルがあると思い込んでいるだけという気がします。医療機器向けの「高いハードル」が単なる思い込みなら、製造業の技術を医療機器や介護機器にうまく融合させてもっと安くていいものが造れるはずです。