有機エレクトロニクス 機器を劇的に薄く、軽く、柔らかくするコア技術
 

オール印刷での次世代ものづくりに挑戦、論理回路もすべてフレキシブルに

山形大学 有機エレクトロニクス研究センター(ROEL) 副センター長 教授 時任静士氏

野澤 哲生=日経エレクトロニクス
2014/05/26 00:00
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 山形大学 教授の時任氏は、TFTにも有機半導体材料を用いたフレキシブル有機ELディスプレーの開発で広く知られる。2010年にNHK放送技術研究所(NHK技研)から山形大学に移籍し、研究開発の幅を広げている。同氏に、研究開発の現状と可能性について聞いた。(聞き手は、野澤哲生=日経エレクトロニクス)

――NHK放送技術研究所(NHK技研)では有機TFTを用いたフレキシブルな有機ELディスプレーを開発していた。今も続けているか。

時任氏
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時任氏 有機ELディスプレーの開発も続けてはいるが、今は幅を大きく広げて、有機半導体を用いたプリンテッドエレクトロニクス、つまり微細加工も可能な印刷由来の技術(微細印刷技術)を基にしたフレキシブルデバイス全般の開発に取り組んでいる。

 微細印刷技術で目指しているのは従来の無機半導体のフォトリソグラフィとは違う方向性での“次世代ものづくり技術”の開発だ。フォトリソグラフィでは、数千億円規模の巨額の初期投資が必要で、しかも材料が製造プロセスの中でかなり無駄になる。工程も10段階など非常に多い。装置産業で、装置が揃えば誰でも作れるという点も問題だった。

 一方、微細印刷技術では、装置に掛かる費用は少なく、材料の利用効率も高い。洗浄工程などがなく、全体でも3~4工程で済む。低温プロセスのため、費やすエネルギーも少ない。ただし、有機エレクトロニクスの実用化は皆苦労していて、材料や装置などすべてを一貫して開発しないとうまくいかない。それは参入障壁が高い、ということでもある。

 我々の研究チームの特徴は、材料設計からデバイスの製造や評価、用途開拓まですべてを自分達で進めていることだ。チームには50名近いスタッフがいる。そのうちの10人は企業からの参加者だ。

―― 具体的には何を開発しているか。

超薄型電子回路の作製例
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時任氏 フレキシブルな回路やRFID(無線タグ)、センサーなどだ。RFIDで用いる論理回路も開発しており、3年後には実用化したい。センサーには温度センサーのほか、バイオセンサーや体温で発電するエネルギーハーベスティング素子などもある。梨の食べごろを知る食べごろセンサーやハウスダストセンサー、衝撃センサーなども考えている。

 既存のセンサー素子は大きくて硬くて重い。一方、我々は薄いフイルムや紙の上に信号処理回路、メモリー、高周波回路、ディスプレーなどをすべて集積してしかも超軽量、超薄型にすることを目指している。バイオセンサーは例えば、タンパク質センサーやウイルス検知センサー、唾液中の窒素酸化物(NOx)を測るストレスセンサー、アレルギーの原因物質(アレルゲン)センサー、感染症センサーなどだ。ガンのセンサーも研究が始まっている。これらが実現すれば、医療費を大幅に減らせる可能性がある。

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