中国・深セン地域には、タッチパネル用コントローラーICのメーカーがたくさんある。今回インタビュー取材した中国Chipone Technology(Beijing)社(北京集創北方科技有限公司)は、2008年9月に設立されたファブレスのIC設計会社である。タッチパネル、液晶パネル、LEDの電源管理ICや、タッチパネル用コントローラーICを設計、供給している。タッチパネル用コントローラーICの主要顧客は、中国のスマートフォンメーカーやタッチパネルメーカーだ。タッチパネルを使うスマートフォンの市場の牽引役が先進国から中国をはじめとする新興国へとシフトする中で、中国のICメーカーはどのような成長戦略を描いているのか。同社に聞いた。(聞き手は、田中 直樹=日経エレクトロニクス)

中国Chipone Technology(Beijing)社(北京集創北方科技有限公司) Vice President(副総裁) Kui Chen(陳馗)氏
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――タッチパネルやコントローラーICの市場の今後を、どのようにみていますか。

 タッチパネルを使ったスマートフォンによって、私たちの生活は大きく変わりました。そして今、身に着けて使うウエアラブル端末という新しい製品も出てきましたが、入力が必要なことに変わりはありません。このビジネスは長く続くとみています。

――タッチパネル用コントローラーICメーカーとしての強みは。

 単にICを提供するだけでなく、さまざまな価値を顧客に提供できることです。例えば、手袋をはめた手でもタッチパネルを操作可能にするソフトウエアを、ICと一緒に提供できます。さらに、さまざまな新材料をセンサー電極に用いたタッチパネルにも対応していきます。例えば、メタルメッシュやグラフェンを用いたタッチパネルです。また、さまざまな構造のタッチパネルにも対応します。従来の外付け方式だけでなく、インセル方式やオンセル方式に対応したICとソフトウエアも提供していきます。曲面タッチパネルへの対応も研究テーマにしています。

 タッチパネルには今、コストダウンが強く求められています。そこで、タッチパネルの構造が変わりつつあります。例えば、センサー電極を2層ITOから単層ITOへ変えようとする動きが出てきています。こうした動きによって、コントローラーICへの要求は厳しさを増しています。

 現在のスマートフォン業界やタッチパネル関連メーカーには、快適で楽しいユーザー体験を手頃なコストで提供することが求められています。コストとのバランスが重要であり、そのバランスは欧米向けと中国向けでは異なります。我々は最適なバランスを見つけようと常に考えています。