先行企業をキャッチアップし、世界トップクラスのシェアを持つまでに急成長した中国のタッチパネルメーカーがある。深セン市に本社を置く中国Shenzhen O-film Tech.社(深セン欧菲光科技有限公司)である。同社がメディアに登場する機会はこれまでほとんどなく、その姿はヴェールに包まれていた。今回、日経エレクトロニクスは、同社Senior Vice President(高級副総裁)のKen Tsai(蔡高校)氏にインタビュー取材する機会を得た。Tsai氏にタッチパネル事業の現状と今後の戦略について聞いた。(聞き手は、田中 直樹=日経エレクトロニクス)

中国Shenzhen O-film Tech.社(深セン欧菲光科技有限公司) Senior Vice President(高級副総裁) Ken Tsai(蔡高校)氏
[画像のクリックで拡大表示]

――タッチパネル事業で急成長していると聞いています。

 2010年以降、倍々ゲームで売り上げを増やしています。2013年の売上高は90億人民元で、出荷数量は1億枚に達しました。スマートフォン用とタブレット端末用のタッチパネルがほとんどです。出荷数量には季節的なサイクルがあり、少ないときは月産500万枚、多いときは月産1000万枚以上、特にピーク時は月産1500万枚以上に達します。2014年に入っても、出荷数量は伸び続けています。第1四半期は月産2000万枚のペースで推移しました。

――開発に力を入れている新技術は。

 通常のITOに替えて、銀(Ag)のナノ粒子を電極材料に用いたメタルメッシュ方式のタッチパネルです。従来のフォトリソグラフィー法ではなく、印刷法によって製造します。化学強化処理したカバーガラスに直接、ナノ銀粒子による2層の電極を印刷します。透明導電フィルムを省けるため、タッチパネルの薄型・軽量化につながります。また、透明導電フィルムをカバーガラスに貼り付ける工程が不要になるため、製造工程が短くなり、生産性が向上します。さらに、フォトリソグラフィー法から印刷法に変更することで、変動の激しいタッチパネル需要にスムーズに対応しやすくなると考えています。

 我々のナノ銀粒子を用いたメタルメッシュ方式タッチパネルの特徴は、メッシュ(電極)の線幅が1.5μm以下と細いことです。メッシュの線幅は細ければ細いほど見えにくくなり、画質劣化への影響が小さくなります。タッチパネルの光透過率も高まります。ナノ銀粒子を用いた線幅1.5μmのメタルメッシュのシート抵抗値は30Ω/□と低く、液晶一体型やノート型のパソコン用のパネルサイズにも対応できます。

 現在、線幅1.5μmで量産できる技術を持つのは我々だけだと自負しています。競合他社は、線幅2.5μmまでしか量産できないでしょう。線幅が1.6μm以下になると、メッシュは人の目には見えなくなります。ナノ銀粒子を用いた線幅1.5μmのメタルメッシュ方式タッチパネルで革命を起こしたい。今後は細線化をさらに進めて、2014年中に線幅1.3μmでの量産を始める計画です。