──これだけのデータベースを運営するためには、データの標準規約作りも大変だったのでは。

北岡 ポケットカルテをリリースする前の段階として、データおよび用語のグローバルな標準化は欠かせない。主に米国で作業が行われたが、私も20年ほど関わってきた。その標準仕様がHL7(Health Level Seven)であり、ポケットカルテや前身のWebカルテは、この標準を準拠している。QRコードで読み取ったHL7タイプのXMLデータを個人単位で集めて、その人のライフログを全部蓄えている。XMLタグを読み取ることで、データを解釈して電子版お薬手帳など所望の画面を作っているのがポケットカルテである。世界で唯一、実稼働しているライフログ管理データベースであると自負している。

──2011年に京都府下の市町村で開始した地域共通診察券の取り組みは。

北岡 ケータイ/スマホやPC、QRコードを活用した仕組みだと、誰もが使いこなすことができるわけではない。このカードは最大30の医療機関の診察券の代わりになる。かつ受診データはポケットカルテで管理できる。銀行のキャッシュカードのようなイメージである。既に1万4500人がこのカードだけを使って地域の様々な病院で受診している。

──ケーブルテレビの位置付けは。

病院や診療所、薬局に置いて情報を確認できる装置のイメージ(図:北岡氏の資料から)
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北岡 例えば高齢者の中には、ケータイ/スマホやPCを持たない人も多い。データを蓄積できても、その内容を確認できない。銀行のキャッシュディスペンサーのように、病院や診療所、薬局に置いて情報を確認できる装置も準備しているが、それでも設置場所まで足を運ぶ必要がある。家庭にあるテレビを使い簡単なリモコン操作で閲覧できればいつでも簡単に自分の情報にアクセスできるというわけだ。

 STBは必ずしもデジタル化されているわけでないので、それでもサクサク動くように1画面当たり100Kバイトで作成した。STB/テレビはあくまでビューワー装置としての利用である。仕組みはクラウド上にあるので、どこのケーブルテレビ局でも、大きな先行投資なしで地域医療に貢献できるサービスをすぐにスタートできる。今後積極的に横展開を図っていきたい。