ジェイコムウエストの京都みやびじょん局とNPO法人の日本サスティナブル・コミュニティ・センター(SCCJ)は、個人向け健康情報管理サービス「ポケットカルテ」のトライアル提供を、J:COMのTVサービスで2013年10月に開始した。

 ポケットカルテとは、利用者が「自己情報コントロール権」を完全に満たす形で、検診履歴や受診履歴、お薬手帳の内容といった自らの診療情報などライフログ情報を生涯にわたり蓄えて無料で管理できる仕組みである。蓄積した情報のビューア端末として、これまでのスマホ/ケータイやパソコンに加えて、京都みやびじょん局との取り組みで、STB(セットトップボックス)経由でテレビも利用できるようになった。

 クラウド型PHR(Personal Health Records)あるいはPLR(Personal Life-log Records)の最先端の実用事例であるポケットカルテについて、考案者の国立病院機構 京都医療センター 医療情報部長/情報化推進研究室長である北岡有喜氏(京都大学医学博士)に聞いた。

(聞き手は田中正晴=日経ニューメディア編集長)


──ポケットカルテの出発点は。

NNM
北岡有喜氏
日本サスティナブル・コミュニティ・センター 顧問、国立病院機構 情報化統括責任者(CIO)補佐官を兼務。ITコンソーシアム京都 医療情報化部会 部会長などを務める。

北岡 そもそも紙のカルテの時代は、カルテが病院にあるので病院のものと考えがちだった。しかし、病院に行って例えば血液検査を行った場合にその生データは、制度上は受診者の所有物という考え方が国内外のコンセンサスの主流である。自分の診療のために病院にデータを預けているという解釈で、日本の制度でも情報開示請求するとカルテのコピーを入手できる。診療情報のうち生データは診療を受けた個人のものであり、誰もが自らのデータを閲覧する権利があるというのが原点だ。

 一般に診療の記録は、受診した個々の医療機関ごとに個別に管理されており、個人の手元にはない。しかも医療法上、診療記録の保持期限はわずか5年間しかない。一方で例えば各種のワクチン注射を打ったのか打っていないのか、いつ打ったのかといった情報は医者ですら必ずしも覚えていない。しかし医療行為の現場で感染症が疑われる症状がでると、こうした情報は治療方針を決めるうえで極めて重要となる。これは一例だが、各種の診療情報を病院に預けるのに加えて、自身で時系列で集約管理できる仕組みがないと、自分の健康を守れない。