『「病院」がトヨタを超える日 医療は日本を救う輸出産業になる!』(講談社、2011年)には、医療を「産業」としてとらえることの重要性が記されている。極論として、国民皆保険制度と診療報酬制度の完全撤廃が医療の産業化に不可欠だと訴えるなど、興味深い提言が数多く示されており、刺激的な一冊だ。

 著書である医療法人社団KNI 理事長の北原茂実氏は今、日本の企業の力を結集した「デジタルホスピタル」の開発に取り組んでいるという。同氏に話を聞いた。

(聞き手は小谷 卓也)


――デジタルホスピタルとは、どのようなものですか。

宮田喜一郎
北原 茂実氏(写真:皆木 優子)

 端的に言えば、病院のロボット化だ。例えば、患者がどこにいて、どんな状態なのかを病院(建物)そのものが認識する。そして、患者がなかなか眠れない場合、気付かれないように空調を調整して、眠れるようにする。あるいは、照明や音響、香りなどを制御することも可能だ。

 自動診断機能も開発している。患者がiPadなどを利用して質問に答えていくと、90%以上の確率で確定診断できる精度がある。このシステムは、ほぼ完成している。

 このシステムができると、何か起きるか。「医者要らず」になるわけだ。例えば、(医療水準が低い)カンボジアに持っていけば、一気に日本と同様の水準の医療が提供できることになる。医療の国際化に非常に役に立つ。

 こうしたデジタルホスピタルを実現するためには、多くの企業の協力が必要だ。数多くの企業の技術を結集しなければならない。