「ヘルスケア・ニューフロンティア」――。こうした構想を今、神奈川県は強力に推進している。「最先端の医療や技術の追求」「未病を治す」という二つのアプローチを融合させることにより、健康寿命日本一と新たな市場・産業の創出を目指す取り組みだ。
この構想の実現に向けた具体的な取り組みとして、国から指定を受けた「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区」「さがみロボット産業特区」の二つの特区も既に動き始めている。神奈川県知事の黒岩祐治氏は、「(二つの特区は)県内の経済のエンジンを回す原動力だ」と位置付ける。
京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区の取り組みの一環として2013年4月に始動したライフイノベーション国際協働センター(GCC:Global Collaboration Center for Life Innovation)の会員には、味の素、コニカミノルタ、ソニー、日立製作所、富士フイルムなど、ヘルスケア関連事業の拡大を狙う大手企業も名を連ねた。
神奈川県が目指す構想では、国内企業が有するさまざまな技術への期待も大きい。こうした産業界への期待について、2013年10月23~25日にパシフィコ横浜で開催する「ヘルスケアデバイス展 2013」(主催:日経BP社)において基調講演「ヘルスケア・ニューフロンティアを支えるものづくり産業」(無料、要事前登録、10/25開催)と題して登壇する予定の同県知事 黒岩祐治氏に話を聞いた。
(聞き手は小谷 卓也)
――ヘルスケア・ニューフロンティア構想に向けた国内のものづくり企業への期待は。
超高齢化社会は確実に到来する。それを何とか乗り越えていかなければ、持続可能な社会は実現しない。あらゆる政策は、そのためにあるべきだと考えている。ものづくり企業が持つさまざまなテクノロジーも、そのために役立てるのは必然だと考えている。
例えば、介護の現場を考えても、今後はテクノロジーがどれだけ貢献できるかがカギになる。実際、介護ロボットを含めた生活支援ロボットの市場は、今後の急拡大が予想されている成長産業であり、大きなニーズがある。つまり、ビジネスチャンスがあるということだ。
既に、多くの企業がそのチャンスを察知しており、さまざまな業種の企業が参入しようとしている。こうした動きは大歓迎であり、我々はその動きを加速させていきたい。そのため、さがみ産業ロボット特区では、介護ロボットの実証実験や開発支援を推進しようとしているところだ。
介護ロボット一つを取り上げても、いろいろな技術の後押しが欠かせない。しかし、何も介護ロボットだけでない。例えば、センサ。センサ技術の活用もこれからは重要になる。一人暮らしの高齢者が家の中でどう行動しているのかを検知して、何かあったときには助けに入る。ここにはセンサが不可欠だ。
医療の領域に近いセンサも必要だろう。例えば、トイレのセンサでガス成分を分析し、それをワイヤレスで飛ばして体の状態が分かるような仕組みだ。他にも、身に着けるセンサで睡眠状態が分かったり、痛くない注射針で自己採血して簡単な検査ができたり、などといった未病の段階のチェックは大切になる。しかも、これらのデータをデータベース化する必要もある。これらの実現には、ありとあらゆるテクノロジーが不可欠だ。