政府は今、医療技術の海外展開の強化を図ろうとしている。2013年6月13日には、官民一体で医療サービスや医療機器の海外展開を推進する組織「MEJ」(Medical Excellence JAPAN)の記者会見と発足記念式典を開催した(関連記事)。発足記念式典には安倍総理も駆け付け、成長戦略の一つと位置付ける医療産業拡大への期待を示した。こうした取り組みについて、経済産業省の福島氏に話を聞いた。

(聞き手は小谷 卓也)


METI
福島氏(写真:加藤 康)

――医療サービスや医療機器の海外展開を促進しようとする政府の取り組みが活発になってきました。

 まさに成長戦略の一環として、医療サービスや医療機器の海外展開を「オール・ジャパン」で進めようという動きになっています。

 安倍総理からは、関係省庁が一体となって海外に医療サービスや医療機器を展開するための中核となる組織を作ることへの指示が出ました。これを受けて、経済産業省の支援で2011年に設立された「MEJ」(Medical Excellence JAPAN)を大幅に改組したのです。

 MEJはこれまで、海外の患者を国内に受け入れる、いわゆる「インバウンド」を促進するための組織でした。今回の改組によって、医療サービスや医療機器を海外に展開する「アウトバウンド」の支援を中核にした組織体制になりました。このため、会員には医療機器メーカーなどにも入ってもらっています。

――医療サービスや医療機器の海外展開を強化しようとする背景は何ですか。

 例えば医療機器の分野では、日本は約6000億円の貿易赤字があります。この赤字をどうやって解消していくのか。方法は二つしかありません。つまり、輸入が多い機器を国産に変えていくか、あるいは輸出を増やしていくか、の二つです。

 前者については、中小企業などの技術を活用することで日本発の機器を増やしていこうとする施策が進んでいます。一方、後者について強化を図っていこうというのが、今回のMEJになります。もちろん、前者の日本発の医療機器が増えてくれば、結果的に輸出の増加にもつながります。

――MEJが手掛ける医療サービスや医療機器の海外展開の支援とは、具体的にはどのようなものでしょうか。

 まずは、それぞれの国の調査研究です。どのような医療ニーズがあって、どのような患者がいるのか。あるいは、どのような医療サービスを提供する余地があるのかなどを調査します。

 そして、官民が一体となって医療サービスや医療機器を売り込む官民ミッションです。安倍総理はゴールデン・ウィークにロシアや中東を訪問しましたが、そこには医療関連の企業も同行しました。また、日本の医療サービスや医療機器を売り込むために、海外でのセミナーやイベントを官民で企画・実施するといったこともやっていきます。