タッチ・パネルの世界市場シェアで首位をひた走る台湾TPK社。同社の成長は目覚ましく、この3年間で売上高は10倍に拡大した。2012年の売上高は59億8000万米ドル(約5680億円)に達している。まだ抵抗膜方式が中心だった2003年の設立当時から静電容量方式に注力し、2007年発売の米Apple社の「iPhone」に代表されるスマートフォンの需要に積極的に対応したことが、急成長の原動力となった。タッチ・パネル技術の変化は速く、静電容量方式の中でも、カバー・ガラス一体型やインセル型など、様々な新技術が登場している。TPK社は今後どのような技術方式を採用していくのか。2013年3月8日の日経ものづくりセミナー「EMS/ODMとどう付き合うか」で講演した同社President&CEOのTom Sun氏に戦略を聞いた。(聞き手は、田中 直樹=日経エレクトロニクス)

TPK社 President&CEOのTom Sun氏
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――スマートフォンやタブレット端末の表面カバーやタッチ・センサ基板には主にガラスが使われていますが、こうしたガラスの置き換えを狙う樹脂製の部材がここにきて登場しています。TPK社として樹脂を採用していく考えはありますか。

 表面カバーは、端末のユーザーが直接触れるところです。したがって、機能だけでなく、外観や触った感じなども重要です。製品全体を見て、バランスを取る必要があります。ガラス以外の素材が出てきている状況は予想通りで、われわれも以前にアクリル樹脂を扱ったことがあります。ただ、現在はガラスを全面的に採用しています。

 2007年1月9日に米Apple社が発表した初代「iPhone」の試作機には、われわれのタッチ・パネルが搭載されていたのですが、実はこのタッチ・パネルにはアクリル樹脂製の表面カバーを使っていました。しかし、6月1日の量産開始時には、すべてガラス製の表面カバーに置き換えました。最大の理由はキズの問題です。アクリル樹脂は、耐傷性が弱かったのです。この点で優れていたのがガラスでした。外観もガラスが最も優れています。端末の外観は、ユーザーにとって非常に重要です。

――タッチ・センサ基板に樹脂製の部材を使う考えはありますか。

 薄型・軽量化のトレンドに沿って、タッチ・センサ基板にガラスではなく樹脂フィルムを採用する事例は増えるでしょう。これと並行して、タッチ・センサの電極を表面カバーのガラス表面に形成することで、従来のタッチ・センサ基板のガラスを不要にする技術の採用も進むと考えています。カバー・ガラス一体型と呼ばれる技術です。この技術をわれわれは「センサ・オン・ガラス(SOG)」と呼んでおり、2013年に力を入れる技術の一つと位置付けています。一方、タッチ・センサを専用ガラス基板に形成する従来のタッチ・パネルの需要も残り続けます。

 われわれは、これらのタッチ・パネルのすべてを生産・供給していきます。製品や顧客の多様化が進む中で、「大量カスタム化(Mass Customization)」の考え方に沿って事業を展開していく考えです。