インドがエレクトロニクス大国を目指して歩み出した。2012年10月にエレクトロニクス産業の振興策「The National Policy on Electronics 2012」を同国の内閣が承認。2020年までに1000億米ドル(1米ドル=92円換算で約9兆2000億円)を同産業の育成に投じる施策だ。
 多額の補助金や税制優遇などの措置で、半導体工場の設立や、エレクトロニクス機器の製造開発施設の誘致を促進する。かねてから自国の強みとしてきたソフトウエア産業を核に、LSIの設計・製造から機器の製造まで産業のすそ野を広げ、民生機器や医療機器、自動車用エレクトロニクス機器などをインド国内で一貫生産できる体制を整える狙いである。
 2013年2月には、インドのKapil Sibal通信情報技術相が来日。大手のエレクトロニクス・メーカーや通信事業者の経営トップ、茂木敏充経済産業相と会談するなど精力的に政策への協力を求めた。東京都内でTech-On!とのインタビューに応じたSibal氏は、「エレクトロニクス産業の育成に日本メーカーとの戦略的な協力は極めて重要だ」と、日本企業に強い期待を示した。


Kapil Sibal氏
インド通信情報技術相(Minister for Communications and Information Technology)。1948年にインド北部のパンジャブ州ジャランダルで生まれた。インドのデリー大学卒業、米ハーバード大学ロースクール修了。弁護士出身の国会議員。インドの2大政党の一つ「インド国民会議(Indian National Congress)」の広報担当官や、人的資源開発相(Minister for Human Resources Development)を経て、2012年10月より現職。
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 今回のエレクトロニクス産業振興策で、Sibal氏がカギの一つとみるのは半導体製造工場の設立だ。インド国内でのLSI製造については、これまでにも何度か話題に上ったものの、実現に至っていない過去がある。同氏は今回のインタビューで、インド初の半導体工場を設立する交渉プロセスが「最終段階に入っている」と明かした。

Sibal氏 インド国内でのチップ(LSI)の製造については現在2件の提案があり、交渉を進めている段階です。半導体工場を立ち上げるプロジェクトが、2013年10月までにスタートします。2015~2016年には、工場での生産が始まるでしょう。

 LSIの国内製造が始まれば、多くのソフトウエア技術者を有するインドで、組み込みソフトウエアの開発がこれまで以上に前進することになります。日本企業はインド国内で、ハードウエアとソフトウエアの両方にアクセスできるようになるわけです。

 Sibal氏は、インドとの協力関係を構築することが、日本のエレクトロニクス・メーカーが真のグローバル企業に脱皮する好機だと説く。

Sibal氏 日本の大手エレクトロニクス・メーカーが国際競争の中で後れを取っていることは認めざるを得ません。理由はシンプルです。