――なぜ、中国の成長は今後も続くと言えるのですか。

 自動車市場を見るとよく分かります。GDPが高い国・地域は、自動車市場の規模が大きいからです。これまで長い間、GDPが1番高い国は米国、2位は日本、3位はドイツでした。これらの国は、自動車市場の規模でも他を圧倒していました。なぜ自動車市場が指標になるのかというと、不動産を除くと、多くの人が一生の間に最も大きな金額を使っているのが自動車だからです。

 中国の自動車市場を見ると、急速に伸びていることが分かります。2000年にはわずか200万台程度でしたが、最近では日本や米国を追い越し、2013年には2000万台近くに達する見込みです。さらに、2020年には3500万台に拡大するという予測を、中国政府は発表しています。トヨタ自動車や日産自動車、ホンダが「中国に引き続き投資する」と口をそろえるのは、このように中国の自動車市場の成長が期待できるためです。

 国・地域の市場(内需)について、2011年に米Brookings Institutionが発表した「The Emerging Middle Class in Developing Countries」という興味深いデータがあります(図4)。これまで、圧倒的に内需の大きい国は米国でした。2009年の米国の中間層消費は4兆3770億米ドルです。これに対して、日本は1兆8000億米ドル、中国は8590億米ドルでした。これが2020年になると、状況は一変することになります。米国の中間層消費は4兆2700億米ドル、日本の中間層消費は2兆2030億米ドルと、いずれも横ばいの見込みです。一方、中国の中間層消費は4兆4680億米ドルに急拡大し、米国と日本を抜いて世界1位の躍り出ると予測されています。2012年の中国の内需は1兆2000億米ドル前後と見られますので、今後8年間で約4倍に拡大するわけです。

図4 中間層消費上位10カ国(米Brookings Institutionのデータ)
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 日本企業の海外進出先は、「安く生産できる場所」から「内需がたくさんある場所」へ変わってきています。欧米の経済が好調なときは、アジアで生産して欧米に輸出すれば良かったのですが、状況は変わりました。今後は、内需のある場所に進出して、そこに生産拠点を作る動きが加速していくでしょう。莫大な内需を持ち、さらに成長が予想される中国でのビジネス・チャンスをいかにものにするかが、日本企業にとってますます重要になると思います。