世界大手の医療機器メーカーである米GE Healthcare社の日本法人、GEヘルスケア・ジャパンは2012年2月、ある地方自治体とビジネス・マッチングを図るためのイベントを開催した。今後の製品開発に向けて、その地に存在する企業が持つ技術を発掘する狙いである(関連記事)。同社が単独で、自治体とのマッチング・イベントを実施するのは今回が初めてのこと。
その自治体とは、青森県である。同県は2011年11月、「青森ライフイノベーション戦略」を策定し、医療・健康・福祉関連分野を次世代の産業の柱として育成する方針を発表した。同県知事の三村氏に、青森ライフイノベーション戦略の狙いや、同県の強みなどを聞いた。
(聞き手は小谷 卓也)
―─「青森ライフイノベーション戦略」の狙いを聞かせてください。
医療・健康・福祉などのライフ関連産業は、これからの成長が期待されている分野です。今後の青森県の経済成長を牽引する新たな産業の柱として、ライフ分野を育成していきたいという狙いです。
一方で、青森県の平均寿命は、男女ともに全国最下位という現実があります。いかに県民の健康づくりを進め、“短命県”の汚名を返上するかという観点からも、重要な戦略だと位置付けています。
―─ライフイノベーションについては現在、政府も成長戦略の柱として掲げ始めました。
我々は2006年に「あおもりウェルネスランド構想」を掲げ、ライフ分野における産業振興に積極的に取り組んできた経緯があります。今回は、こうした構想の中で、沸々と湧き上がりつつあった企業の動きをうまく組み合わせ、外部の有識者の意見も取り入れながら戦略を立てて進めていこうというものです。決して、何もない状態から、にわかに戦略を策定したわけではありません。都道府県レベルでは初となる、本格的なライフイノベーション戦略だと自負しています。
―─沸々と湧き上がりつつある企業の動きとは、具体的にはどのようなものでしょうか。
ライフ分野において、地域経済を牽引するような、きらりと光る中小企業やベンチャー企業が現れてきています。病理画像診断支援装置の開発を手掛けるベンチャー企業のクラーロは、その好例です。同社の「バーチャルスライド」は、国内トップクラスのシェアを誇っています。
他にも、青森オリンパスの内視鏡処置具、マルマンコンピュータサービスの看護システムなど、国内トップクラスのシェアを確保している企業が数多く存在します。実際、直近10年間における医療機器生産額の伸び率は、青森県が全国でダントツの1位であるという事実があります。
加えて青森には、優れた微細加工技術などを有する、ものづくり企業がたくさんありますし、リンゴの糖度を計る機器だってあります。こうした技術を、医療・健康機器の分野に生かせる可能性は大いにあるわけです。