「エネルギー・ハーベスティング技術はビルのリニューアル工事を獲得する営業の際の重要な武器になる」――。

 こう位置付けるのは、準大手ゼネコンの戸田建設である。同社は2011年12月に村田製作所と共同で、エネルギー・ハーベスティング技術を活用した電池不要の無線照明制御システムを開発・発表した( Tech-On! 関連記事)。同社でエネルギー・ハーベスティング技術関連のプロジェクトを主導する森一紘氏(戸田建設 環境事業推進室 企画管理課 課長)に話を聞いた。

――まず、エネルギー・ハーベスティング技術に着目した理由を教えて欲しい。


 建設業界にはこれまで、エネルギー・ハーベスティングという概念はありませんでした。例えば、振動の運動エネルギーを電力に変換する「振動発電」を考えると、建設業界にとって建物の揺れは“敵”だったのです。我々は、振動をいかに抑えるか、ということに取り組んできました。

 つまり、エネルギー・ハーベスティングはビルや橋など構造物の揺れを活用しようとするもので、建設業界の常識とは逆の発想なのです。

 我々が、エネルギー・ハーベスティングと建設業界をつなげると面白いのでは、と発想きっかけは、「ZEBをいかにして実現するか」を考えていた時でした。ZEBとは、net Zero-Energy Buildingの略で、年間を通してエネルギー使用量をゼロとみなせる建物と定義しています。国策として経済産業省は2030年までにすべての新築建物をZEB化する目標を掲げています。当社は、国の方針より一歩先を行き、2020年までに我々が建設する建物に対してZEB化を達成する目標を掲げています。

 ZEBという考えの中では、70~80%を省エネルギー技術で達成し、残りをBDF(bio diesel fuel、バイオ・ディーゼル燃料)の導入やCO2の排出権(クレジット)の利用で帳尻を合わせようとする考え方があります。ですが、当社はこうした“見せかけのZEB”ではなく、内容のしっかり伴うZEBを目指しています。

 そして、さまざまな候補技術を検討する中で、エネルギー・ハーベスティングと出会ったのです。エネルギー・ハーベスティングで得られる電力は個々には非常に小さいですが、たくさん集められれば十分に大きな力を発揮すると考えています。

――具体的にどのような用途で利用するのか。