世界のものづくりの中心地であるアジア。日本から韓国、台湾、そして中国、東南アジアへと地域を広げながら、急成長を続けてきた。しかし、2008年秋のリーマン・ショックから世界経済の停滞が続く中で、アジアの製造業界も低成長を余儀なくされている。こうした状況を打開しようと、アジアの製造業界の将来について議論するイベントがある。2012年11月に中国・北京で第6回の年次総会を迎える「アジア製造業フォーラム」だ。低成長から脱却するためには、製造業の発展で先行した日本にも、これからの発展を担う中国にも、それぞれの役割がある。アジア製造業フォーラムを開催するアジア製造業協会の主席執行官(CEO)の羅軍氏に、日本の製造業界へのメッセージや、日本と中国の経済交流などについて聞いた。(聞き手は田中直樹=日経エレクトロニクス)

アジア製造業協会 主席執行官の羅軍氏
[画像のクリックで拡大表示]

――かつて世界経済を席巻してきた日本の製造業界ですが、現在は不振にあえいでいる企業が少なくありません。中国からは、日本の製造業界はどのように見えますか。

 日本の製造業界はこれまで世界トップでした。しかし、最近は、成長が鈍化しています。その主な理由は、日本政府のトップである首相がよく変わることにあると思います。政治が不安定なことが、日本の経済にかなり影響を与えていると見ています。製造業に対する安定した方針がないために、電子、自動車、機械、海洋のすべての業界が低成長になっているのだと思います。日本のメーカーには、早く低迷から脱してほしいと願っています。

 今、中国の市場の中で、日本製品がどんどん少なくなってきています。10年前は、日本製品は他に比べて優れていて、皆が「買いたい」と思うものでした。しかし、その日本製品の姿が、中国市場で見えなくなってきています。日本の企業や製品の影響力が弱まっているのです。日本の企業だけでなく政府も、このような状況を認識してほしいと思います。

 また、2011年3月11日の東日本大震災によって、日本の製造業界は甚大な被害を受けました。さらに、タイの洪水も、日本企業に大きな影響を与えました。日本の中でも特に優れている、自動車業界とエレクトロニクス業界が深刻な影響を受けました。

 東日本大震災では、日本企業だけでなく、取引先である海外企業の活動にも影響が出ました。中国企業も影響を受けました。こうした背景から、日本企業のビジネスを欧米企業が奪う事例が増えています。日本企業のシェアが低下し、影響力が弱くなっています。