江蘇省無錫(むしゃく)市は高速鉄道を使えばわずか28分でアクセスできるという利便性から、多くの日系企業が進出しており、その数は約1000社に上る。かつてはアパレル産業で栄えたが、現在は電子情報、機械設備、自動車部品、新エネルギー、新材料といった産業分野で発展している。中でも日系企業が多く進出している電子情報産業では、カメラ、ノートパソコン、携帯用バッテリー、FPD、半導体という分野が強い。そんな無錫市の発展戦略を無錫市商務局無錫市口岸弁公室副局長、副主任の汪行氏に聞いた。(聞き手は、中田靖=アジアビジネス本部)

約1000社の日系企業が進出

無錫は早くから日系企業が多く進出してきました。無錫の産業動向を教えてください。

タイトル
無錫市商務局無錫市口岸弁公室副局長、副主任の汪行氏

 日本の皆さんは「無錫旅情」の歌を通じて、無錫のことをご存知の方も多いと思います。歌にあるように、無錫は水が豊かで美しい風景が広がる街です。それだけでなく無錫は商業と工業でも有名です。

 無錫は20世紀初頭は米とシルクで栄えました。長江のほとりに米とシルクの港も建設されました。その後工業化にも力を入れ、1930年代になると工業総生産は上海市に次いで中国2位のちいに踊りでました。70年代に入ると農業の集団化が進み「蘇南ビズモデル」という名で広くしられるようになりました。そして90年代の改革開放時代にはいち早く外資を取り込み、国際化を進め今日に至ります。
  ソニーやパナソニック、ニコン、シャープ、クボタ、ブリジストンといった日本お大手企業はこの頃に無錫に参入しました。こうした積極的な誘致戦略のおかげで、フォーチュン誌が選ぶ世界のトップ500社のうち、33社の日本企業が無錫に進出しました。いまでは無錫市に進出した日系企業の数は約1000社に上ります。

 外資の中でも日系企業は投資規模が大きいため、無錫の発展におおいに貢献しました。日系企業との合作は当初は製造業が中心でしたが、いまはサービス産業、製造業でもR&Dや設計の分野、そして企業のヘッドオフィスも多く進出しています。今後も最先端の分野を中心に誘致を進めたいと考えています。

一人当たりのGDPは全国3位の実力

無錫の地理的、経済的優位性はどうですか。

 江蘇州にある無錫市は上海の西128キロに位置します。無錫市の面積は4788平方キロで、この中には大きな湖である太湖の面積も含まれます。地理的に見れば長江デルタのちょうど真ん中に位置する利便性のよい街です。高速鉄道を使えばわずか28分で上海にアクセスできます。蘇州や南京へのアクセスも便利です。北京へも高速鉄道を使えば4時間50分で到達します。2014年には地下鉄も完成予定で、そうなれば市内から高速鉄道駅へのアクセスもさらに便利になります。

 飛行機を使ったアクセスも便利です。市の中心部にある無錫蘇南国際空港からは、東京、大阪、香港、マカオ、バンコクへの国際便が離発着しています。また北京、広州、深セン、成都、瀋陽、西安にも便が出ています。

 無錫の2011年のGDPは6880億元です。人口が約600万人なので、一人当たりのGDPは10万7000元で、これは全国で3番目の数字です。北京や広州などの大都市よりも高い点は特筆すべきでしょう。工業総生産は全国で6位で、輸出入総額は全国で8位です。こうした経済指標から見ても、無錫の実力がお分かりいただけると思います。

 無錫市には2つの県と7つの行政区があります。江陰のGDPは県レベルで全国第1位となっています。宜興も県レベルで全国のトップ10以内にランクインしています。

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