上海から西約200キロにある中国江蘇省丹陽市は自動車部品製造とメガネ製造で有名な街である。その丹陽市にある丹陽経済開発区では、新たに日本の中小自動車部品メーカーが集結する「日本自動車部品工業団地(JAPIC)」を設立して、自動車部品を基盤とした産業を立ち上げようとしている。当初は22社の日本企業が入園したが、年末には80社、3年で300社、5年で500社の日本企業の入園を目指すという。そこで中共江蘇省丹陽市委員会常委で、丹陽経済開発区工委書記で管委会主任の李剛氏に、発展のシナリオを聞いた。(聞き手は、中田靖=アジアビジネス本部)

江蘇省丹陽市に日本自動車部品工業団地を建設

丹陽経済開発区の中に「日本自動車部品工業団地(JAPIC)」を開設しました。その狙いはどこにありますか。

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中共江蘇省丹陽市委員会常委、 丹陽経済開発区工委書記、管委会主任の李剛氏

 中国の自動車産業の発展は急速に進んでいますが、その一方で自動車部品産業の発展はそのペースに追いついていません。丹陽は中国における自動車部品の伝統的な生産基地ではあるのですが、まだ品質レベルは日本企業に及びません。ただ日本企業も中国現地での生産より、日本から部品を輸入していることが多いのです。

 特に日系の完成車メーカーは、50%の部品を日本から輸入しています。そのためコスト高にもなっています。もし部品メーカーも中国に進出して、現地生産に移行することができれば、コストを大幅にカットすることができるはずです。

 そこで丹陽経済開発区では、日本の自動車部品メーカーのために「日本自動車部品工業団地(JAPIC)」を建設し、もっともっと多くの日本企業の進出を促したいと考えています。日本企業がもっと進出することで、中国地元企業のレベルアップにもつながるはずです。

ティア3、ティア4の中小部品メーカーを集める

日本自動車部品工業団地ではどのクラスの部品メーカーの誘致を考えていますか。また進出企業にはどのような優遇策を考えていますか。

 自動車産業においてはティア3以下の中小の自動車部品メーカーの役割が重要と考えています。ティア3やティア4がいなければティア1やティア2は力を発揮することができません。500社のティア3、ティア4企業がここに集まれば、必然的にティア2以上の企業はこのエリアで商売をすることになるからです。

 ティア1やティア2の企業は自動車メーカーの進出に合わせて、その拠点工場の近くに進出する例が多いですが、ティア3やティア4企業はそうしたことにとらわれる必要はありません。ティア3やティア4が日系自動車メーカーだけでなく、中国の地元自動車メーカーとも商売ができるようになれば、進出エリアは日系自動車メーカーの拠点にこだわる必要がなくなるからです。

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 もちろんティア3やティア4といった企業は資金力も乏しく、駐在できる人員の数も限りがあります。そこで日本自動車部品工業団地では、資金面や人材面、サービス面で徹底的なサポートをします。

 レンタル工場を用意し、しかも進出する最初の2年または3年の間はレンタル費用を無料にします。丹陽はもともと自動車部品メーカーの街なので、人材も豊富です。また近くにある江蘇大学では日本語学科があり、日本語を話せる人材も多くお役に立てることができます。