台湾のハイテク産業を支える企業・研究機関の集積地“サイエンスパーク”が、日台産業協力を一段上のレベルに引き上げようと動き出した。50社以上のディスプレイ関連企業が集まる南部サイエンスパーク(南部科学工業園区)では、日台双方の企業が共同で製品開発や市場創出に取り組めるように、日本企業の技術力と台湾企業の生産能力を結びつけようと、新たな戦略プランを練り始めている。南部科学工業園区としても、日本企業の海外拠点としての地位を確立し、園区の優位性を高めることにつながる。南部科学工業園区のトップである管理局 局長のChun-Wei Chen(陳俊偉)氏に、同園区の取り組みや台日協力の今後について聞いた。

南部科学工業園区 管理局 局長のChun-Wei Chen(陳俊偉)氏
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――南部サイエンスパーク(南部科学工業園区)の優位性、重点産業、将来の発展の方向性について、どのように考えていますか。

 南部サイエンスパークの優位性をまとめると10点あります。(1)インフラ設備の充実や水・電力の供給安定化を図るなど、高レベルのハイテク投資環境を整備しています。(2)標準工場および土地のリースが可能です。(3)研究開発機関、学校、検査測定認証センターが入居しており、企業による研究開発の支援や、製品の認証取得に必要な時間の短縮が可能です。(4)投資申請から建築管理、輸出業務、商業登記、物流運輸、環境、人的資源まで、単一窓口による行政サービスを用意しています。(5)入居企業が輸入する自家用機械、設備、原材料、燃料、半製品は輸入税、貨物税、営業税(事業税)が免除され、免税手続きや担保、記帳、還付手続きも不要です。(6)製品あるいは労務サービスを輸出する入居企業に対して営業税率0%を適用しています。(7)海外投資者に対して国内投資者と同等の優遇条件、権利を保障します。(8)入居企業に対して「科学工業園区研発精進産学合作計画補助」および「南部バイオ医療機材産業集落発展計画補助」に基づく助成金を提供しています。(9)人材育成補助計画および専門・技術人材育成計画の実施、大学生に対する在学時職業訓練の奨励などを通じて入居企業で働く専門・技術スタッフの能力向上を支援しています。(10)外資系企業への対応を専門とする「外商小組」を設置して、ダイレクトでスピーディーなサービスを提供しています。例えば、投資・運営上の問題解決支援、座談会や法令講習会の実施、日本人駐在員向け台湾生活体験イベント・講座の開催を通じて、日本企業間の交流促進および台湾生活に対する満足度向上を図っています。

 南部サイエンスパークには集積回路、光エレクトロニクス、バイオテクノロジ、情報通信、精密機械、コンピュータ周辺機器その他のハイテク分野を中心に179社が進出しています。中でも光エレクトロニクス、半導体、バイオテクノロジの分野では、国際的にも重要な生産拠点としての地位を確立しています。現在、南部サイエンスパークではクリーンエネルギー、バイオ医療機材など新しい分野の産業育成にも力を入れています。今後は川上、川下の関連企業を積極的に誘致することで産業集積の一層の充実を図っていきます。

――ディスプレイ関連企業の集積化の状況は。

 ディスプレイ産業の中でも特にTFT液晶ディスプレイについてはChimei Innolux社(CMI:奇美電子)やHannStar Display社(瀚宇彩晶)を中心に川上・川下メーカーが多数進出し、高度な産業集積を形成しています。CMI社は既に7つのパネル工場を持っているほか、高雄園区にも第8.5世代工場を建設し、生産能力の拡充を進めています。HannStar社は園内に2つのパネル工場を持っています。

 今後、スマートフォンやタブレット端末の需要拡大に伴ってタッチ・パネル市場の成長が見込まれています。南部サイエンスパークではHannsTouch Solution社(和光電)とChimeiグループ(奇美グループ)がタッチ・パネルを生産しています。園内のTFT液晶ディスプレイ関連メーカーによるデバイス、材料、設備の供給体制も整っており、光エレクトロニクス産業のさらなる成長が期待されています。2012年4月現在、ディスプレイおよび関連の光エレクトロニクス企業で累計50社の入居が認可されています。