上海から西に128キロにある江蘇省無錫市にある錫山経済技術開発区は日系企業が1200社以上進出するなど注目の国家級開発区である。上海と南京を結ぶ高速鉄道を使えば、上海からわずか30分でアクセスできる利便性も人気のポイントだ。電子情報産業、機械設備産業、自動車部品産業などを中核に発展してきた。無錫市は中国が国策として推し進めている物聯網(ウーレンワン)の第1号都市に認定されたり、EVの開発やバイオ医薬を推進するなど、新興産業でも注目を集めている。そんな錫山経済技術開発区の発展戦略を無錫市錫山区委員会常委で錫山経済技術開発区工作委員会副書記、開発区管理委員会副主任の陳建清氏に聞いた。(聞き手は、中田靖=アジアビジネス本部)

1200社を超える日系企業が進出

錫山経済技術開発区はどのような産業の特徴がありますか。

陳建清氏
陳建清氏
無錫市錫山区委員会常委、錫山経済技術開発区工作委員会副書記、開発区管理委員会副主任

 錫山経済技術開発区は1992年に建設が始まり、93年には省級開発区に、そして2003年には国家級開発区に昇格しました。開発区の主力産業は電子情報産業で、次いで機械設備産業、自動車部品産業、現代サービス産業があり、このほかEVなどの新エネルギー産業、バイオ医薬といった新興産業も発展を遂げつつあります。

 開発区の2011年のGDPは230億元、工業総生産は900億元に上ります。一番発展している産業は電子情報産業で全体の30%を占めます。次いで機械設備産業、自動車部品産業があり、それらが20%~25%を占めています。

 開発区での外資の割合は7割を占め、ローカル企業は3割です。進出している日系企業の数は1200社に上り、35社が独資で進出しています。日本の駐在員は5000人から6000人おり、日系企業の進出が多い開発区といえるのではないでしょうか。

 投資規模が一番大きな企業は、オイルシール(エンジンやギヤードモータに使用して、回転軸端部からの油漏れや外部からのほこりの侵入を防ぐシール)で世界ナンバー1シェアのNOKです。

 このほか、積水樹脂、三菱樹脂、日立化成、日本ケミカルも進出しています。

進出企業にとって魅力あるサプライチェーン

開発区では進出企業に対してどのようなサービス、優遇政策を提供しますか。

 日本企業が進出する際は、投資前の調査や登録の手続き、工場の企画から建設まで、開発区がワンストップでサービスを提供します。

 三菱樹脂などは投資金額が1000万ドルと少ないですが、それでも土地やリソースを開発区が提供しています。

 これまでの経験からいうと、進出企業にとって重要なのは優遇政策というより、政府のサービスであり、また市場環境にあると思います。つまり、企業がそこに進出したときに、産業チェーンが既にあって、ビジネスチャンスがそこにあることが大切になります。

 錫山経済技術開発区は上記産業において、川上、川下のサプライチェーンが充実しているので、新しい企業が進出しても、すぐにビジネスを開始することができます。

 現在、進出する企業が考えているのは中国国内市場ではないでしょうか。そうすると、錫山経済技術開発区で生産し、そこのサプライチェーンに組み込まれることで、中国市場に製品を販売していくことも容易にできるのです。