黄海に面した中国山東省煙台市の煙台ハイテク産業開発区は、1990年に設立され、2010年9月に国家級開発区に昇格した。総面積48.8km2の敷地内に、バイオ・医薬、エレクトロニクス、ソフトウエアなどのハイテク企業が集積する。2年前に国家級となったのを機に、海外企業の誘致、特に「フォーチュン・グローバル500」(米フォーチュン誌が発表する世界の企業の売上高ランキング)に登場する企業の誘致にも力を入れ、国際的な「ブルーOcean経済産業園区」となることを目指している。そこで、同開発区の代表団団長として来日した煙台市政治協商会議副主席・同市ハイテク区工作委員会書記の劉洪波氏に、開発区の強みと新たな発展戦略を聞いた。(聞き手は田中直樹=Tech-On!編集プロデューサー)

――今回の来日の目的は。

劉洪波氏
劉洪波氏
煙台市政治協商会議副主席・同市ハイテク区工作委員会書記

 中国進出を検討している日本企業に、煙台ハイテク産業開発区の投資環境や投資メリットおよび重点産業を説明するために訪日しました。煙台ハイテク産業開発区は国家級開発区に昇格してからまだ2年弱ですので、日本の方にはあまり知られていません。青い空や広々とした海に恵まれた環境に、バイオ・医薬、エレクトロニクス、ソフトウエアなどの様々なハイテク企業が集積している開発区の姿を、たくさんの人に知ってもらいたい、という思いで日本に来ました。

 山東省の経済レベルは、中国36省の全体の中で2位であり、中国の第一陣営に属します。そして、山東省内の17エリアの中で、煙台市の経済レベルも2位です。このように、山東省煙台市は中国の経済発展を先導してきました。現在は、国内一流の国際化ブルー経済イノベーション科技園区を目指して、国際的な産業園区になろうとしています。

 その一環として、日本企業の誘致に力を入れています。日本企業が投資した1000万ドル以上のプロジェクトは81件、外資系全体の投資額は13億4000万ドルです。その中で、フォーチュン・グローバル500にランクされている企業は10社進出してきました。日本企業では、伊藤忠商事、三井物産、本田商事、三菱マテリアルなど大手会社も投資しています。今は、日本企業が開発区に望んでいることや、日本企業が抱えている問題をまず把握することに重点を置いています。そして、日本企業の要望にできるだけ応えていきたい。日本企業とは、エレクトロニクス、バイオ・医薬、ソフトウエア、BPO(business process outsourcing)、自動車部品、環境などの分野で互いに協力できるところがたくさんあります。

――どのような日本企業に興味を持っていますか。

 ハイテク開発区として、日本のハイテク企業に興味があります。以前は、加工技術を持つ日本企業に興味がありました。しかし、中国の技術の発展によって、必要なものが変わってきました。

 日本企業に対しては、研究開発成果を産業化するときに、中国に莫大な市場があることを忘れないでほしいと思います。中国に投資することで、莫大な利益を得ることができます。今回の訪日で、日本には「トクホ(特定保健用食品)」に代表される優れた健康食品があることが分かりました。この中国展開は有望だと見ています。このような、今後伸びる分野においては特に、中国に大きな市場があることを忘れないでほしいです。

――煙台ハイテク産業開発区の魅力とは。

 最大の魅力は環境です。煙台は中国でも有名な観光地で、海岸線が900kmも続きます。生活環境が素晴らしい。煙台を訪れた日本人の多くが、高く評価しています。しかも、経済的地位も高いのが煙台の魅力です。中国の中でも、早くから海外貿易が認められた14地域のうちの一つが煙台です。

 日本や韓国との距離が近いことも魅力です。大阪との間には直行便が就航しており、約2時間で行き来できます。また、日本・中国・韓国の自由貿易エリアが煙台にはあります。こうした背景から、 煙台に投資して成功している会社も既にありますし、将来的にはいっぱいチャンスがあります。

――日本だけでなく韓国にも訪問して、投資説明会を開催していますね。

 地理的に近い韓国も同じく重視しています。日本企業よりも一歩先に進出してきた韓国企業はたくさんあります。例えば、SamsungグループもLGグループもSKグループも北京に自社ビルを持っています。このような日本企業はまだ多くはありません。13億人の中国市場で見かける携帯電話機もSamsung製やLG製が多く、日本メーカー製の機種はほとんど見られません。より多くの日本企業に高新区へ進出していただきたい。日本のハイエンド・イノベーション型人材ももちろん大歓迎します。煙台高新区としては全面的なサポートおよびサービスを提供します。Win-Win関係を築き次の輝きへ向いましょう。