現代サービス産業や環境分野の誘致も推進

蘇州工業園区ではハイテク分野や製造業でもR&D分野に注力するといういことですが、それ以外ではどんな産業の進出を希望しますか。

 蘇州工業園区が考えるもう一つの方向である現代サービス産業分野では、銀行、証券、保険などの金融機関や百貨店などの流通も進出していただければと思います。医療分野も日本のほうが進んでいるので、是非進出していただければと思います。グレーター蘇州という構想では、都市と農村が一体となって発展していく姿を描いています。こうしたエリア全体の社会インフラが充実していくように、新しいサービス産業を誘致したいと考えています。

 また、日本は環境保護、資源の再利用、ゴミ処理、省エネなどで最先端の技術を持っています。こうした日本の技術に期待しています。日本は省エネや環境配慮型の住宅建設も得意です。開発区には既にダイワハウスが進出して期待に応えていただいています。今後はこうした建設不動産分野も積極的に誘致したいと思います。

 このように開発区は製造業のレベルアップの推進に力を入れながらも、革新型経済とサービス型経済への経済転換を目指していく考えです。それを実現するために、東部高新技術産業区の建設強化を継続し、総合保税区の機能を拡大するだけでなく、当面、金鶏湖金融ビジネス集積地、独墅湖産学研集積地、陽澄湖国家級バカンスリゾートと一流国際観光地の構築に全力を注いでいく考えです。

タイトル

優秀人材には様々な手当を用意

ハイテクやソフトウエア産業を誘致するにあたっては優秀な人材が不可欠です。蘇州工業園区ではどのような施策を考えていますか。

 蘇州工業園区では最先端の人材には優遇策を提供します。中国にもコアパーツを開発する拠点を置いて、中国内でサプライチェーンを構築する方法を考えていただきたいと思います。R&D分野で進出していただければ、地元の優秀な人材を提供する用意もあります。

  開発区には中国科学技術大学、中国人民大学をはじめとする23の大学と国家級研究所があり、7万人強の学生が学んでいます。蘇州工業開発区は「金鶏湖双百人材計画」を打ち出しています。これは2010年より5年間、“千人計画”(海外にいる優秀な人材を中国に呼び戻す政策)の中の人材や、中国科学院の“百人計画”の人材の中から人材を集め、200人規模の人材を育成するというものです。

 こうしたハイレベル人材には、給与手当、研修手当、生活手当を支給し、そうした人材を獲得した企業にはプロジェクト補助などの支援も行います。

日本企業はもっと素早い経営判断を

蘇州工業園区が日本に求めることは何かありますか。

楊知評氏

 開発区の第12次五カ年計画は、中新連合協調理事会第12次会議で確定した今後15年(2010-2024年)の目標をベースに、計画期間が終了するまでに経済の主要指標が先進国レベルに達するよう実行していく考えです。こうした発展を実現するためにも、日本を始めとする外資系企業の誘致や投資が不可欠です。

 ただ、一つ気がかりなのは日本企業の意思決定の遅さです。国内の民営企業や欧米企業に比べても顕著です。しかし、中国の変化は早いのです。中日は産業協力のポテンシャルがあり、ベストなパートナーとなる素地は十分ですが、投資に対する判断のスピードをもっと上げていかないと、日本はこうした協業のチャンスを失うことになります。

 中国は日本と違って政権は安定しています。発展戦略を決めたら5年はその方向に向けて突き進み、政策のブレもありません。海外から見れば、安心して投資ができる国といえるのではないでしょうか。とにかく時間をかけずにWIN-WINの協業を進めていければと思います。