蘇州工業園区は1994年2月に設立された国家級開発区だ。中国とシンガポール(中新)の両国政府の合作開発区としてスタートし、産業と都市開発を両輪に発展してきた。288平方キロのうち、中新合作区は80平方キロを占める。開発区には日本企業の誘致も活発で、460社が進出してきた。これまでは製造業中心に開発が進められてきたが、今後は、ハイテク産業、現代サービス産業などを軸に新たな発展のシナリオを描いている。そこで蘇州工業園区共産党工作委員会副書記で管理員会主任の楊知評氏に、第12次五カ年計画における発展計画と、日本企業誘致への期待を語ってもらった。(聞き手は中田靖=アジアビジネス本部)

5大新興産業の生産高を1000億元に

蘇州工業園区の特徴と発展戦略をお聞かせください。

楊知評氏
楊知評氏
蘇州工業園区共産党工作委員会副書記
管理委員会主任

 蘇州市は長江デルタの中心に位置し、東は上海、西は太湖、南は浙江省、北は長江に接し、長江経済発展ベルトと沿海経済開放区の交差点にあります。蘇州工業区は蘇州の東に位置し、上海から80キロの距離です。環状線、蘇嘉杭、蘇昆太、蘇虞張、蘇滬高速道路が建設され、地下鉄1号線も開通しました。上海-南京の鉄道、上海-南京の新幹線、北京-上海の新幹線も蘇州を通ります。蘇州から上海までは約20分、南京までは1時間弱、北京までは5時間弱で到着できます。蘇州工業園区は蘇州駅まで約5キロ、蘇州北駅まで約10キロと最寄り駅までのアクセスも便利です。上海-南京路線では園区駅も利用できます。また近くに蘇南、虹橋、浦東などの国際空港があります。京杭運河を通して長江ともつながっています。道路、鉄道、水運を通して主要都市にアクセス可能で、上海、杭州、無錫、南京とは「1時間経済圏」を構築しています。

 蘇州工業園区は1994年2月に設立された歴史ある国家級開発区です。ここ十数年の発展で、電子部品、液晶パネル部品を中心とする電子情報、精密機械、バイオ医薬、新素材などの分野で発展を遂げ、それぞれの産業でサプライチェーンが形成されています。和艦科技を始めとする半導体産業の生産高が全国の15%を占めています。さらに建設中のサムソン新世代液晶パネルが生産が始まれば、フラットパネルディスプレイ産業は全国の中でも大きなシェアを獲得することになるでしょう。

 一方、2005年に「開発区サービス産業倍増計画」を打ち出した後、GDPに占めるサービス産業の比率が毎年2ポイントずつ増えています。またハイテク分野を中心に、9つの特色ある国家級産業基地が形成されています。新エネルギー、バイオ医薬、通信、ソフト・アニメ・ゲーム、環境保護といった5大新興産業を軸に100億元クラスの新興産業群を育成し、2015年末までにこらら5大新興産業の生産高の合計を1000億元クラスに引き上げる考えです。

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3つの「化」と3つの「型」で産業の新たな軸を作る

中国では沿岸地域を中心にR&D分野の誘致にシフトし、従来型の製造業は内陸に移すという計画が進んでいます。蘇州工業園区でも同様のシナリオを描いているのですか。

 蘇州工業園区は、国際化、現代化、情報化という3つの「化」をベースにしたハイテク開発区という側面と、生態型、イノベーション型、幸福型という3つの「型」をベースにした総合ビジネスサービス開発区となることを目指しています。今後はこの「化」と「型」という2つの概念が発展のポイント考えています。

 まず第一に産業転換レベルアップにおいて大きな成果を出すべく、国家革新型技術開発区を建設します。第二に都市の現代化建設において大きな進展を遂げ、率先してハイレベルの区鎮(都市部と農村部)一体化開発区を建設します。第三に社会事業のインフラを整備し公共サービスの模範開発区を建設します。第四に環境保護の立場に立った開発を進め、国家生態環境文明模範開発区の建設を目指します。

 現在、蘇州工業園区に日本から進出している企業は460社に上りますが、その多くを製造業が占めています。しかも、これまではコストが安いという点や中国市場の購買力という点で進出した企業がほとんどでした。しかし、これはもはや古い概念で、これからは蘇州工業園区が掲げる新しい概念に合致した企業を誘致したいと考えています。

 日本の自動車部品、機械設備、医療機器、バイオ医薬、新素材などの産業の進出を歓迎します。ハイテク分野においては、日本のナノテクノロジー関連産業と一層協力できるよう期待しています。R&Dセンターに進出してほしいと考えます。そうした企業には優遇策を提供します。

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