海外からの優秀人材を積極支援

産業を誘致、発展させていくにあたって、人材についてはどのような政策をとっていますか。

薛愛強氏

 開発区では優秀人材については年に1回、報奨金を支給しています。開発区にとって産業誘致は重要ですが、それにもまして重要なのが優秀人材の導入と考えています。

 これは市政府も同じ方針で、武漢市主導で「高額人材エリート1000人計画」を打ち出しました。これは海外からの優秀人材を取り込むのが狙いです。海外から帰ってきた優秀な人材に対して資金やインフラの提供を市政府主導で行っています。昨年は海外から戻った優秀人材の起業に関して、7つのプロジェクトを支援しました。今年は台湾と米国の優秀人材獲得に力を入れます。

 海外からの優秀人材という場合、2つのケースがあります。1つは海外の企業に勤めている中国人の優秀集人材を呼び寄せて、企業を促してその支援を行うというものです。もう1つは海外の企業から呼び寄せて、武漢の企業での就職を支援するというものです。

 武漢経済技術開発区であれば、やはり主力産業である自動車や家電のメーカーで勤めていて経験を積んでいる人材を希望します。台湾や米国だけでなく、日本で働いている技術者も歓迎します。年齢や学歴は重視しないので、例えば日本の企業を早期退職して、わが開発区で働いてみたいという日本人技術者も受け入れる用意があります。

 武漢はもともと大学や専門学校が多く、人材は豊富です。市内に在校する大学生の数は60万人、専門技術者は45万人います。こうした人材に加えて、海外から優秀な人材を“誘致”することで、さらに開発区力を高めていく方針です。むしろ企業誘致よりも人材誘致のほうがこれからは重要な誘致活動になるかもしれません。

レンタル工場も完備した中小企業向けの「日本産業園区」も建設

日本の中小企業に対するサポート体制はどうなっていますか。また武漢に進出する際に交通面での利便性についてもお聞かせください。

 もちろんそうはいっても、今後も企業誘致にも力を入れていく考えです。特に日本の場合、中小企業が優秀な技術を持っており、また自動車などではサプライチェーンを構築していく上でも重要な役割を果たします。そこで開発区の中に日本の中小企業向けの日本産業園区を建設する計画です。

タイトル

 園区の面積は3000ムー(1ムーは667平方メートル)で、この中に標準工場を建設して、中小企業が参入しやすいようにレンタル工場として利用できるようにする予定です。中小企業が土地を購入したり、工場を建設するのは負担が大きくなるので、できるだけ参入しやすい環境を作る考えです。もちろんレンタル料も割安に設定する予定です。土地を収用して、もうすぐ道路ができるという段階です。レンタル工場は2014年には完成する予定です。

 武漢は日本の企業にとって便利な立地です。既に成田と福岡に直行便が飛んでいます。海外への直行便は、上記2つを含め、ソウル、バンコク、シンガポール、パリのほか、10月にはシカゴ便も開通するため、全部で7つの国際都市とつながることになります。鉄道も武漢と広州、武漢と上海を結ぶ高速鉄道が走っています。今年中には北京から武漢までの高速鉄道も開通します。高速道路も北京と珠海、上海と成都を結ぶ幹線が武漢で交差しています。このように武漢は中国の中心地として非常に利便性が高いといえます。

 武漢は1000個の湖を抱え、近くにある三峡ダムによる水力発電によって電力供給には全く心配いりません。開発区が建設されてから1回も停電したことがないので、こうした点も日本企業には安心でしょう。

 武漢経済技術開発区では最近リーダーが交代し、新しいリーダーは日本をはじめとする海外企業の誘致に積極的です。今年からは開発区独自のセミナーを企画しており、日本でも8月か9月に開催する予定です。