古くから多くの日本企業が進出している遼寧省大連市。そこにおいて、今注目の新進開発区がある。それが大連双D港産業園区(DDポート)だ。2つのDはDIGITALとDNAを指す。つまりITや製造業などの先端技術分野を意味するDIGITALと、バイオ医薬やバイオ食品産業分野を意味するDNAという2つのDを柱に産業園区を作り、新たな発展を目指している。そこで大連双D港産業園区管理員会副主任の生偉氏にこの新しい開発区の発展のシナリオを聞いた。(聞き手は、中田靖=アジアビジネス本部)

大連DDポートは金州新区の中核開発区

大連市にはいくつかの開発区があります。大連双D港産業園区(DDポート)とはどのような開発区なのですか。

生偉氏
生偉氏
大連双D港産業園区管理員会副主任

 大連双D港産業園区(DDポート)はその名前の通り、2つのDを産業の柱としています。1つ目のDはDIGITALのDので、ITと製造業を意味しています。2つ目のDはDNAのD、つまりバイオ医薬やバイオ食品を意味しており、この2つのDに象徴される産業発展を目指しているのです。

 DDポートは、最初は市内にある大連ハイテクパーク(大連高新技術園区)が多くの進出企業によって収容しきれなくなったため、その飛び地として、大連市の北東に建設されたのが始まりです。その後、2008年に管理委員会が大連ハイテクパークから大連経済技術開発区に移り、さらに2010年4月には大連経済技術開発区が金州区と合併して、金州新区となりました。単なる開発区ではなく、新たな都市(新区)として、工業団地をはじめ、商業施設やビジネスセンターも含めた大規模な開発を進めることになったのです。

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 その際に金州新区内に10大工業園区を建設し、DDポートもその1つとして独立した管理委員会を作ることになり、今に至っています。大連ハイテクパークの飛び地の頃は約10平方キロの敷地面積だったのですが、金州新区となってからは敷地面積を30平方キロに拡大しました。

インテルがアジア初の前工程半導体工場を建設

DDポートでは2つのDであるデジタルとバイオ医薬分野に注力するということですが、具体的にはどのような産業を柱と考えていますか。

 金州新区がDDポートに課した役割は産業の付加価値を高めることにあります。DDポートでは2つのDの中でも以下の4つの産業を重点的に発展させようと考えています。1つはLEDチップ産業です。昨年12月、広東徳豪潤達電気股フェン有限公司の大連子会社、大連徳豪光電科技有限公司が世界最大規模のLEDチップ工場の稼働を開始しました。またインテルは2010年10月から半導体製造施設を大連で稼働させています。インテルが半導体の前工程工場を建設するのはアジアでは大連が初めてとなります。インテルは25億ドルを投資しています。

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 もう1つの産業は工作機械です。実は工作機械分野は最も発展が進んでいて、既に産業チェーンが構築されています。世界のトップメーカーもDDポートに進出しています。昨年10月に進出した日本のヤマザキマザックは工作機械の工場の建設を進めていて、今年秋には汎用の小型CNCと小型マシニングセンタ(MC)の生産を開始する予定です。

 3つ目はバイオ医薬です。DDポート内にあるバイオテクノロジー/医薬バイオ産業パークには、実に大連のバイオ医薬関係の7割が進出しています。ここではワクチンの研究開発や漢方医薬の研究開発だけでなく、なまこのエキスを抽出したり、バイオテクノロジーを使った食品開発なども盛んです。中国の大手食品会社も進出しています。

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 4つ目はソフトウエア・アウトソーシング産業です。これまでは市内のハイテクパークが担っていた分野ですが、これからはDDポートでも積極的に誘致を進めていきたいと考えています。DDポートは市内から離れているので、これまでこうした産業がなかなか進出しにくい状況でした。しかし、金州新区として都市開発も進めていくことになったので状況が変わりました。昨年、日立製作所が地元企業と組んでDDポートに進出を決めました。今年5月には鍬入れ式も終わり、年内に施設が完成する予定です。電子商取引や動画技術といった新しい分野の産業が発展していくと期待しています。