今や世界最大の自動車市場となった中国。政府の環境政策への期待が高まる中、電動車両においても急速に普及が進むのは明白だ。そして、その動力となる電池に関しても、研究開発が盛んに行われている。

このような背景を基に、2012年5月21日に「第1回 日中電池サミット」(日中国交正常化40周年:アジア・バッテリー・フォーラム)が開催される。中国からは、「国家863電動車両重大専項動力電池テストセンター」の主任である王子冬氏と、「国家863計画リン酸鉄リチウム重点プロジェクト」の責任者で様々な正極材料の研究に取り組んでいる北京大学の陳継涛副教授が来日、中国の最新動向について解説する。開催に先立ち,同シンポジウムで講演するデロイト トーマツ コンサルティング シニアマネジャーの周磊氏にインタビューした(聞き手=日経エレクトロニクス 狩集 浩志)。

――中国政府は2012年4月18日、省エネルギーと新エネルギーに関する次世代自動車の発展計画「節能与新能源汽車産業発展規劃(2012-2020年)」を発表しました。電気自動車(EV)とプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)の生産・販売台数を2015年までに累計50万台に、2020年までに同500万台に増やすという非常に意欲的な取り組みです。

周磊氏
周磊氏
デロイト トーマツ コンサルティング シニアマネジャー

 世界的に見ても非常に巨大な電動車両のマーケットといえます。環境問題などのグローバルな観点からも中国がこうした政策を進めることは各国にとって好材料になるでしょう。

 個人的には、EVやPHEVの主要部品となる動力電池が今後どうなるか注目しています。日系メーカーは電池分野で先駆者的な存在であり、絶好の機会が訪れているのではないでしょうか。

 こうした中、日中電池サミットには中国の動力電池に関する研究開発のキーパーソンが来日します。これまでにも国際的な学会では日中の交流はありましたが、産業界レベルでこうしたシンポジウムが開催されるのは新たな試みといえるでしょう。大規模な動力電池の生産について、日中の関係者が意見を交換できる場が提供されることは、電池産業界の活性化につながるはずです。

――2012年4月に開催された「AutoChina2012(北京モーターショー)」を見学されたとのこと。北京モーターショーは今や世界最大のモーターショーに位置付けられています。電動車両に対する各社の取り組みはいかがでしたか。

 欧米勢を含む外資系メーカーがハイブリッド車(HEV)やEVといったコンセプトカーおよび量産車モデルを展示するなど電動車両を重要な市場と位置付けているのを感じました。特に日系メーカーはエコ重視の姿勢が見て取れました。

周磊氏

 各社とも今すぐ大規模な量産によって普及させるというわけではなく、環境と省エネといった中国の政策に沿った形で準備を進めているという感じです。少しずつ量産規模を拡大していき、2015年がジャンプアップの年になりそうです。

 電動車両の普及拡大は、今後中国の消費者をいかに引き付けられるかに懸かっているでしょう。電動車両をめぐる産業界はバリューチェーンが形成されつつあり、勢いがあります。この勢いを産業界から消費者へとつなげてもらいたいと思います。そのためには中国の消費者に対する啓蒙活動が重要になると考えています。

デロイト トーマツ コンサルティング シニアマネジャー
周 磊
自動車/製造業を中心に、日本国内プロジェクトのみならず、中国、欧米など諸外国を対象とした多数のプロジェクトに参画。海外事業・技術戦略、ビジネスモデル構築、市場参入シナリオ・ロードマップ策定などの上流工程から、具体的な経営管理体制構築の下流工程まで、一貫したコンサルティングプロジェクトを経験。2009年NHKスペシャル「自動車革命 第2回 スモール・ハンドレッド 新たな挑戦者たち」や、2010年NHKスペシャル「自動車革命 次世代カー 電池をめぐる闘い」の外部アドバイザーも務める。「中国次世代自動車市場への参入戦略 現地発イノベーションの最前線」(日経BP社)などの執筆を手掛けたほか、講演、寄稿実績多数。博士(経済学)。