四川省の省都である成都は、世界銀行のグローバル投資環境調査レポートで「中国内陸投資環境の模範都市」に選出されたほか、フォーブス誌の「今後10年で世界で最も早く成長する都市ランキング」で1位に選出されるなど、中国内陸部で最も注目されている都市の1つである。2011年のGDPは前年比15.2%増の6854億6000万元に達し、四川省の3分の1を占めている。政府が掲げる西部大開発政策のもと、IT・エレクトロニクス産業が好調に業績を伸ばしている。また成都は、三国志の蜀の都でもあり、パンダの故郷としても知られる。「世界で住みやすい都市」「中国で最も幸福感のある都市ランキング」で毎年トップクラスに選出されるなど、ビジネスのみならず、観光、住環境の良い街としても人気がある。これまでは欧米企業の進出が先行してきたが、今後は日本企業の誘致にも力を入れていく考えだ。そこで成都の産業をけん引している成都高新技術産業開発区発展画策局局長の湯継強氏に、誘致戦略と発展のシナリオを聞いた。(聞き手は、中田靖=アジアビジネス本部)

IT、バイオ医薬、精密機械製造に強み

成都高新技術産業開発区はどんな産業に強味があるのですか。

湯継強氏
湯継強氏
成都高新技術産業開発区発展画策局長

 成都高新技術産業開発区(CDHT)は1988年に設立され、北京、上海、成都に続いて91年に中国4番目の国家級高新技術開発区として認定された歴史ある開発区です。

 CDHTは成都市の西部と南部に位置する二つの地域で構成されています。総面積43平方キロの西部地域では産業ハイテクパークを形成しており、IT、バイオ医薬、精密機械製造業の企業が進出しています。一方、総面積87平方キロの南部地域には、金融、商業、アウトソーシング企業が進出しています。

 CDHTの主力産業はIT、バイオ医薬、精密機械製造の3つで、これらの産業がCDHTの発展を牽引しています。この3つの産業の中でも一番強いのがIT産業です。IT産業でも主力となるのは、IC回路、ディスプレイ、アウトソーシング・通信、iPad端末の4分野です。さきほど挙げたバイオ医薬、精密製造と合わせて、6分野が主力産業ともいえるでしょう。

タイトル

 フォーチュントップ500社のうち、100社がCDHTに進出しています。ソフトウエアトップ20社のうち、13社がCDHTに進出しています。モトローラ、エリクソン、アルカテル・ルーセント、ノキアシーメンスネットワークスなど世界五大通信機器メーカーや、華為技術(ファーウエイ・テクノロジーズ)、ZTEといった中国の二大通信機器メーカーが天府ソフトウエアパークに進出しています。

 ディスプレイ産業は2007年の京東方科技の進出にはじまり、台湾Foxconn(フォックスコン=鴻海=ホンハイ)社の本格展開により、中国最大規模の産業基地に成長を遂げようとしています。

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 インテルは2003年からチップ生産とテスト工場を稼働させています。工場設立から5年のうちに4度の増資が行われ、投資額は6億ドルに達しています。このため世界中のノートパソコンのうち、「Made in 成都」のICチップが5割のシェアを占めているのです。

 インテルに続いて、中芯国際、宇芯半導体、アメリカのMPS、DELL、TI、レノボなどの大手企業が相次ぎハイテクゾーンに投資しており、その投資総額は20億ドルを上回っています。また、iPadは全世界の3分の1が成都で製造されています。