第1は、工場を一つの国や地域に集中させることが得策ではないこと。第2に、統合後に社員の心を一つにする道筋が見えないこと。誰がどうやってリーダーシップを発揮するのでしょうか。第3には、お客様との接点を三つ(3社)から一つに減らすことが容易ではないこと。

 第4の課題は、統合によるコスト削減効果がそもそも高くないことです。中小型液晶パネル・モジュールは、大型品とコスト構造が全く違います。液晶モジュールの原価に占めるパネル自体のコストは、たかだか3割。その他の7割は、コネクタやフレキシブル基板、LEDパッケージングといった周辺部材とその実装費によって占められています。スマートフォン製造の大手であり、精密な組み立てを得意とする私どもなら、ここに手を入れられます。

─Hon Hai社の営業利益率は、2001年が9.2%、2005年が5.5%、2010年が2.9%と、年々低下しています。総資産利益率(ROA)も同様に下降しています。この一因は、Apple社の「iPhone」のように設備投資がかさむ受注が増えたことです。今後、収益力を回復できると考えていますか。

 はい。私どもは2010年後半から工場労働者の給与を引き上げるとともに、四川省や河南省といった中国内陸部に巨大な新工場を建設し始めました。今は、遷移(transition)期間中といえます。あと1年くらいの時間を要するでしょう。稼働中の工場を止めることはできないので、生産拠点の重複は避けられません。このため、コストが跳ね上がっています。

 しかし、こうした投資は、未来に向けて必ず必要です。同時に、私どもは金型やCNC(コンピュータ数値制御)工作機械、自動化装置を自ら造るための投資もしています。取り組みの成果は、2012年に必ず現れます。

─日本企業と交渉を重ねる中で、「ここは改善してほしい」と思われることも多いのではないでしょうか。

 三つあります。まず、意思決定をボトムアップからトップダウンに切り替えること。リーダーシップとは、決定を下すことなのです。次に、国際化を進めること。日本企業は、日本人のものではありません。実際、私どもは、ソニーの工場管理を取り入れて、世界各地でソニー製品を造っています。最後に、より多くの情報をパートナー企業と共有すること。正しいパートナー企業を選び、情報を隠さないことから、共存共栄は始まるのではないでしょうか。