「西部デルタ」構想を支える交通・物流網の整備を推進

内陸部にある重慶にとって交通、物流は気になるところです。どのような発展計画を考えていますか。

 「西部デルタ(西三角)」発展戦略が第12次五カ年計画に組み入れられています。これは重慶経済圏と成都経済圏に、西安を中心とする関中都市群を加えた経済圏全体を西部デルタとしてとらえ、それを総合的に発展させていくというものです。西部デルタの総面積は37万8000平方キロに達し、人口は1億4000万人で、61都市が含まれます。そのGDP総額は3兆元を超え、全国の7%超、西部全体の約4割を占めています。

 西部デルタ発展の鍵となるのが、交通であり、物流です。そこでこのエリアを結ぶ高速鉄度や高速道路の整備を進めることで物流網を発展させ、西部デルタが中国国内産業の中核地域となることを目指します。現在中国鉄道部が高速鉄道網の建設計画のスローガンとして掲げているのが、重慶から移動する時間を指して、「1時間成都」「2時間貴陽」「3時間西安」「4時間武漢」「5時間蘭州」「6時間広州」「7時間北京」「8時間上海」というものです。

水路地図
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 国際物流においても、重慶は「三港両路 」の陸・海・空からなる立体交通網を構築しています。国内貨物輸送の60%が長江水路を通過していて、2010年の貨物通過量は15億トンに達し、ミシシッピ川の3倍、ライン川の5倍を超え、世界1位となっています。重慶港は中国最大の内陸河川水上輸送港で、1万トンクラスの船団が一年を通して重慶に着港できます。そして重慶と上海間の輸送における事前通関により国際物流の流れも大きく変える可能性があります。

 「渝新欧(重慶-新疆-欧州)」国際鉄道7カ国ルートがあり、「五定列車 」の開通によって、ドイツのデュイスブルクまで15日前後で到着できるため、沿海部からの輸送に比べ24日間短縮可能です。中国と欧州との「SSTL(Smart and Secure Trade Lanes)」のスピード通関は、上海と重慶でのみ試験的に実施されています。

タイトル
国際鉄道地図

 一方、重慶・深セン間の鉄道海運連絡輸送により南に向かって海に出る大ルートがあります。渝黔線(重慶-貴陽)、渝深線(重慶-深セン)を経由して、北部の港湾やASEAN各国につながっているのです。雲南を経由してミャンマーに入り、インド洋と中東地域に通じる渝昆鉄道(重慶-昆明)も建設します。

 江北国際空港の輸送能力は、近く年間延べ7500万人に達し、中国で4番目に大きい拠点空港となっています。2015年までに、港湾貨物の総取扱能力は1億8000万トンに達し、コンテナの取扱能力は700万TEU、ばら積み貨物の総トン数は2億トン以上に達する見通しです。さらに「航空輸送の経由路線」として、国際貨物便に無料で給油するための保税オイルタンクを建設する計画です。